ただの備忘録

未来の自分に贈る、舞台の記憶と感想

「貴婦人の訪問 THE VISIT」@シアタークリエ  2016/12/3ソワレ

どうしても見納めがしたくて再びギュレンの街に来てしまった…。前楽。3回目ということもあって、今回はマチルデとクラウスに注目してみておこう!と意気込んで観劇。やっぱり楽しい。

 

涼風さんの迫力が日に日に増していませんか…?圧倒的な歌声。涼風さんが演じるクレアが傷だらけになりながら正義を求める姿が痛々しくもあり美しくもあり。ただただクレアには幸せになってほしいと思う。

 

 ※以下、前回の感想含め、気にせずネタバレ

 

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黒豹を仕留める流れ、まさにアルフレッドを追いつめていくことを暗示している演出だなぁと改めて思った。しかも黒豹に対して弔いの歌を歌う人々…アルフレッドのときはそんなことをしていないのに。。

 

TV局が街を取材しに来た日、雑貨屋の隅で嘆くクラウスに女の子が「きっと大丈夫よ」(※正しい台詞は失念したのでニュアンス)と言って白い花をあげていた。それを胸のポケットに入れたクラウス。翌日の最後の審判のときも、高価な服を纏ったクラウスの胸ポケットに花が入っていた。だけどその花が萎れていて…見つけたとき、ぞっとした。

この花は倫理と道徳の象徴かな。萎れた花は悪に飲み込まれたクラウスの心。その花をアルフレッドの亡骸にそっと置いたのは悪に飲み込まれた自分を許してくれと言う懺悔なのか、それとも彼自身の道徳や倫理をアルフレッドと共に葬り去るという意味なのかな。電話のシーンで「我々はヒューマニスト…!」と声高に叫んでいた彼を見ていただけに、人間の欲の深さ、悪の心に飲み込まれた群衆に立ち向かうことの困難さをまざまざと見せつけられた。

 

最後の審判。マチルデの表情を逃すまいとじっと見ていた。手を挙げるまでの時間、迷いがあるようにも見えた。しかしアルフレッドの顔を見たあとは、意志が固まったかのようなきっとした表情をして、迷いなく手を挙げた。

彼女の正義は積み重ねてきた二人の生活を否定したアルフレッドへの罰なのか。

クレアが街の人たちを掻き分けて横たわったアルフレッドにすがり付いていたとき、マチルデは微動だにせず、ずっと目を伏せていた(むしろ目を閉じて二人を見ないようにしていた?)。クレアが「人殺し…!」って吐き捨てるときもずっと。顔を上げたのはクレアが立ち去る間際にマチルデと対峙するとき。今回の席が下手だったからマチルデの表情が見れなくてとても残念だったのだけど、クレアが彼女に向かって笑っていたのが印象的だった。アルフレッドの愛はマチルデではなく自分のものだったという勝利の笑みなのか、アルフレッドを私刑とする最後の決断を下した彼女に対する嘲笑なのか…。

そのあと、空から降ってくるお金を見上げる街の人たちはクラウスでさえも欲にまみれた光悦とした表情をしていたのにもかかわらず、マチルデはただ一人苦しそうに顔を歪ませていた。 

莫大なお金を与える。ただひとつの条件はアルフレッドの死。最初は非人道的だと非難していた街の人たちが、徐々に欲に溺れて、自分たちを正当化していくさまがリアルだった。アルフレッドの過去の罪がなければ、街の人たちは一線を越えることはなかったはず。自分達を正当化する理由が存在したことによって、「正義」という名の「私刑」を下す人々。アルフレッドは本当にクズな男だけど、罪状としては「偽証罪」。通常なら死刑なんてならないはずの罪によって殺された。

クラウスの「悪に飲み込まれてしまう…!」という悲痛な叫びは、「正義」と信じこむ街の人たちには聞こえなかったんだろうなぁ。そして疑心暗鬼になったアルフレッドは友人クラウスの言葉がまったく聞こえていなかった。街を逃げ出そうとしたアルフレッドを助けようとしたクラウス。あの場面で友人の言葉が聞こえていれば…。

悪に飲み込まれたクラウスが最後に手向けた萎れた花は、やっぱり彼の「ヒューマニストとしての自分」を葬り去っているということなんだろうなぁ。

 

自分たちは「正義」であると正当化する集団の恐ろしさ。劇中だけじゃなく現実にも確かにある内容だよな…。

 

カテコで山口さんと涼風さんが腕を組んでニコニコしながらちょこちょこ歩いてくる姿に最後癒されるというか心が救われる気分になる。 

本当に観れば観るほど面白い。クリエ公演は終わってしまったけれど、大阪公演には間に合いますので、気になる方は是非…!

曲も演出もかっこよくて、何回も言うけどわたしの好みにどんぴしゃなんですよ。

東宝さまは、CDを是非是非販売してください!!!よろしくお願いします!! 

「ミュージカル「黒執事」〜NOAH’S ARK CIRCUS〜」@東京ドームシティ

いわゆる「2.5次元ミュージカル」というのは初めてでして、原作読んでおいた方が良いかもという友人のアドバイスを実行しようと思っていたのですが、仕事が立て込んでて時間の余裕がなく何もかもが初めましての状態で挑んだ黒執事。3公演行ってきました。

・11/23(水):ソワレ

・11/26(土):マチネ/ソワレ

 

しかも初めましてがアリーナ。友人の言葉を借りれば「殴られた」。まずTDCという会場による爆音響。ほんとTDCの音響は何とかして欲しい案件…(あと座席ね)。音が大きすぎて、肝心の台詞が掻き消されるし、音がつぶれて聞こえる…。

「サーカス編」っていうこともあってか、演出も特効があって「じゃにーずかな…?」と思ったし、エアリアルティシューがあって「じゃにーずかな…?」と思ったし、綱渡りや空中ブランコがあって「じゃにーずかな…?」と思ったよ?(じゃにーずがサーカスっぽいことをしているとも言うが) 水を使った演出がなくて良かったよ!←

古川くんの執事姿は美しかった~!フライングの姿勢がとても美しくて感動した。あとダンスのご披露ありがたかった!いいもん見れた!

しかし、全体的に色々な衝撃が強くて、初回の感想が「…とりあえず漫画を忠実に実写化したんだろうなぁ」(←原作未読)というぼんやりとしたものだった。しかも曲が全然頭に残らなくて、「ミュージカルって言うほど歌ってなくない…?」と思ってしまった。

 

そんな感じで楽しめるかなぁ?という気持ちも持ち合わせたまま、11/26のマチソワへ。

「あれ、面白いよ…?」

 世界観に慣れたのもあるのかな。2バルってこともあって舞台全体を見られるし、何より音圧がかなり減ったので普通に楽しめた。

そして初回は全然頭に残らなかった歌がよく聞こえてくる…!歌ってた。いっぱい歌ってたわ。色々殴られてたから記憶に残らなかっただけだわ。ごめん。

そして双眼鏡で古川くんの表情を追いかけてみたら、怪しい笑みを浮かべていたりと、とても美しい悪魔だった…!いいねいいね!

ビーストとのデュエットも悪魔的でとても良かった。あとアグニにシエルが喘息を持っているのではと咳で判断した時の嫉妬のような悔しそうなお顔がとても良かった。 

急遽キャスト変更になったドール役の銀河くんがとても良かったなぁ。名付けの場面は毎回泣きそうになった。三浦くん演じるジャガーの「俺たちの可愛い妹」の優しい言い方もまた泣ける。

 

シエルの芸の披露や葬儀屋の場面、スネークの場面とかいろいろパターンを作っているのは複数回見ても楽しめた。

 

漫画が原作のミュージカルを「2.5次元ミュージカル」と呼ぶようだけど、最近で言えば「王家の紋章」とかも漫画原作でも呼ばれないのはなんでなんだろう。東宝だから…?←

「2.5次元」というワードで手を出しづらい客層もいる気がするからもったいないなぁ。初回ではいろいろ殴られたけど、2回目以降は普通にミュージカルとして楽しめたし。自分たちでハードル上げちゃってる気がするなぁとうことも思った観劇でした。

「貴婦人の訪問 THE VISIT」@シアタークリエ 2016/11/20

プレビュー公演を観た後、「もう1回観たい…!」と思った貴婦人の訪問。スケジュールをどうにかこうにか調整(というかもろもろキャンセルして)して観に行ってきました~!予定をキャンセルしたかいあった。やっぱり楽曲がどんぴしゃ好み。

 

ちなみにプレビュー公演の感想↓ 

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結末を知ったうえで観るとより楽しい。そして初見では「……ん?」と引っかかっていたけど、スルーしたところの意味に気付く。楽しい。 

 

以下、気にせずネタバレ。

 

街に降り立ったクレアがヨハネス(牧師)にかける言葉。「死刑囚の言葉も聞いてらっしゃるの?」→牧師をはじめ街の人たちは「この国では死刑は廃止されました」って何言ってるんだというような返答をするんだけど、これはアルフレッドが死刑囚(私刑囚)になったときにあなたは彼の話を聞くことになるでしょう、という意味が含まれてたんだなぁとか。

 

クレアのペットの黒い豹が逃げ出して、街の人が総出で駆逐したときの「銃声が2発聞こえたけど」というセリフ。これ、クレアがアルフレッドと恋人同士だったときに彼を「私の黒い豹」と言っていたことと関係してますよね?2発っていうのはペットの豹だけでなくアルフレッドも街の人に殺されるという暗示なのかな。想像楽しい。

 

登場人物の服装が心変わりしたところから高価で質の高いものに変わっていくのを今回の観劇で逐次確認できた!アンサンブルの女の人、一幕までは上の服だけ新調してるけど、下は最初のままというちぐはぐした感じだったんだけど、二幕では上下とも綺麗な服になってて。牧師も二幕から質の良さそうなものに変わっていた。最後の最後に衣装が変わったのが校長と妻のマチルデ。警察署長は真っ先に高価な服になっていたなぁ。逆に最後の場面のクレアは上着も着ず、着の身着のままというような服装(それまでは基本的に高価な服装)。面白い…。

 

1幕ラストでクレアとアルフレッドが和解しちゃう…?と思った後の「死んでも許さない…!」というセリフ。初めて見たときは「え…!?」という驚きと、「それでこそクレア!!」という安堵感だったのだけど、クレアの心境がいまいちわからず…。でも今回はアルフレッドの自分への愛が深いことを知ったがために余計裏切りが許せなくなったんだろうなぁというのを感じた。しかもアルフレッドは結局マチルデと結婚してるし。やっぱりアルフレッドはクズ男です(確信)。

 

今回、マティス市長のアドリブというかアレンジ増えた?くすりと笑うような感じが増えたような。個人的にはオチャメな感じが少なかったプレビュー公演の方が好み。

  

しかし、プレビュー公演よりも涼風さんの迫力が増してて、全身鳥肌立った。凄い…!

演出もスポットライトを効果的に使っていて、かっこいいんだよなぁ。電話のところとかガスマスクのところとか。本当にかっこいい。私の好みにどんぴしゃ。

 

悲劇的な最期を迎えるけど、カテコでは涼風さんと山口さんが腕を組んでてとてとと歩いてくるのがとっても可愛い。そして捌けるときに2人で「せーのっ!」ってタイミング合わせてヒゲダンスを披露してくれる石川さんと瀬奈さんなw

 

ほんっとに素晴らしいので、たくさんの人に観て欲しい。

もう1回観たいんだけど、残りの日程で行ける日がクリエ千秋楽しかない…。さすがにお譲りないだろうなぁ。うーん。

ということで東宝さまは貴婦人のCD出してください。よろしくお願いいたします!!! 

「貴婦人の訪問 THE VISIT」@シアター1010 2016/11/3

見てきました~!

プレビュー公演初日。エリザベートでの涼風ゾフィーがあまりにも美しくて強くて、他の作品も見てみたい!ということでチケット購入。本当はクリエのチケットを取っていたのですが、どうにも仕事で行けそうにないということでギリギリで本公演のチケットを譲っていただきました。

 

涼風クレアが美しくて強くて気高いこと…!!!涼風さんの歌声、本当に好きだわ。そして山口さん、今井さん、石井さん、今さん、中村さんという実力派揃いで耳が心地よいこと心地よいこと。

大富豪となって故郷に戻ってきたクレアが、財政破綻寸前のギュレンの人々に20億ユーロを与えるかわりに、かつての恋人アルフレッドの死を求めるという前振りなんですが、これだけ聞くとクレアってどんだけ悪い女なんや…って思ってたんですよ。なぜ故郷に戻ってきたのか、なぜそんな無理難題をふっかけるのか、っていうのを紐解きながら話が進んでいくんですが……

※以下ネタバレしてるかもよー

 

 

ほんっとアルフレッドがクズ男!!!思わず口が悪くなっちゃうくらい、クズ男なんですよ!!!

 

「友人の死」と「莫大なお金」、「正義」と「過去の罪」を天秤にかけて、どちらを選ぶのか?と観客側も考えさせられるんですが、山口さんが頼りなさげに、周りに命を狙われていると思い込んでてんてこまいに逃げ惑う男の姿をコミカルに演じていて、"楽しめる"エンターテインメントに昇華しているなぁと思った。アルフレッドを愚直に、真面目に演じるだけでは、クレアだけでなく観客の憎しみも一身に受けるだけ。だってクズなんだもん(※詳細は観劇して確認してください)。それをギリギリ「ダメ男」のラインに乗せて、「この人はダメな人なんだけど、愛されている人なんです…!><」ってアルフレッドの妻マルチデと同じ気持ちにさせてくる塩梅が絶妙。凄いなぁ。

 

クレアがアルフレッドに「返して 私を」と強い口調で歌うんですが、(↓プロモーション映像にもある歌)

www.youtube.com

なぜクレアがここまでアルフレッドを憎んでいるのか、この場面のときはわからないんです。この歌は 彼女の魂の叫びだったんですね…。 

クレアはこの街で「クレア」を失った。冒頭、クレアが故郷に戻ってきたときに「この街は変わってないわね」と言い捨てるんですが、彼女の過去を知ると意味がわかる。汚い言葉を浴びせて街から彼女を追い出したギュレンの人たち。それが大富豪となったとしるや「ようこそ!故郷へ!」と大歓迎。唯一過去のことを気にかけていたアルフレッドも「昔のことは忘れてるよ」という友人の言葉を鵜呑みにする。この街の人たちの浅はかさときたら…!!自分たちがしたことの重大さに気付いていない。

 「正義」

街の人々は自分たちの「正義」に従って、決断を下した。アルフレッドの子供、そして妻のマルチデも。この家族の決断はちょっと衝撃的だった。クレアも最初はアルフレッドの死を求めることが自分の正義と言っていたし、「死んでも許さない」とアルフレッドを突き放してたけど、最後の最後でその正義が誤っていたことに気付いた。いや、正義より愛が勝ったのかな?

ラストの場面の街の人は苦悶の欠片はなく、自分達の「正義」に一点の曇りもないという表情だった。そしてちょっと笑みを浮かべていた?瀬名さん演じるマルチデはただ空を見つめていた。その様子が怖かった。

 

全然ハッピーエンドではないけど、最後まで楽しめたのはやっぱり音楽と演者さんたちの歌が良いからだろうなぁ。あーCD出ないかな…とても私の好みの音楽だった!

 

そして結末を知った上でもう一度見たいという欲が出てきているので、おそらくまた観に行きます…。だけど11月で空いてる日があと1日くらいしかない…行けるのか…いや、行く…。

 

あ、パンフレットのインタビューで「もし20億ユーロが手に入ったら何をしますか?」って言う質問に対する瀬名さんの答えが素直すぎて声に出して笑っちゃったので、気になる人はぜひ(笑) 

「エリザベート」2016@中日劇場 その3 ~大千秋楽~

終わりましたね。長い旅路が。

わたしは今年のエリザベートしか知らないけれども、2015年に3か月、2016年に4か月。1つの作品のこれだけのロングランって凄いなぁと改めて。

有難いことに大千秋楽を観劇することができたので、以下感想。

・10/23マチネ:花總、城田、田代、京本、山崎、香寿

 

大千秋楽というある意味特殊な状況下で各キャストが集大成を、という熱意を感じる舞台だった。その中で花總シシィは日々の公演と同様にエリザベートととして今日も生きていた。無邪気な少女が孤独を深め、最後には死を求めてしまう。年を重ねる過程がとても丁寧で、美しくて。孤高の皇后だったんだなぁと改めて思う。「私だけに」の自我を見つけた表情、「私が踊るとき」の自分の生きる道を見つけて"勝利"したときの表情、精神病院での自分の孤独の深さに苦しむ表情、そして最後にトートを受け入れたときの安堵の表情、そのひとつひとつが美しかった…。

 

城田トート。帝劇と比較すると本当に”化けた”トートだった。登場のシーンから「わたしが好きな方のトート…!」と嬉しくなった。今日の城田トートは心の機微がよりわかりやすく演じられていた気がする。シシィと初めて出会うシーンで心奪われる表情とか、体操室で高圧的に迫るところとか、もう…好き。今日も「最後のダンス」で「さー!」のところをキー上げていて全身の毛穴が開くほどの興奮(わたしのね)。あ、そういえば今日のしろたん、アイラインがいつもより濃いめだったような。子ルドとの場面、ものすっごいぎょろっとした目で見つめていた。銃を子ルドの手から引き抜くときのぎょろつきはんぱない。「こんなの初めて見た」というような、ものすごく興味津々!!って感じで時間をかけて取り上げてた。独立運動の場面も大我ルドルフをものすっごい「獲物」を見ているかのよう。怖い。好き(え。

大我ルドルフ。友達とも話したのだけど、いろいろ詰め込まれていたルドルフだったかなと。個人的主観から申しますと、ルドルフとしての完成度から言えば芳雄トート千秋楽の10/16マチネが本当に本当に良かったのです…!!!今日のマチネは、今の大我さんのルドルフへの思いに溢れた演技だった。一番驚いたのは闇広でキーを上げてた。トートに迫られる前の「しーばーらーれてー」の「れてー」のとこ。大我さん、凄っ…!となった。と思ったら、公演後ありがたいツイートが。

Wルドルフ…!!!!大千秋楽だからこそできたんだろうなぁ。

話を戻しまして。独立運動では階段を降りて前に出た後、眼を閉じてすっと顔を上げて次に目を開いたときには覚悟は決まっていた。闘志に溢れる目。

蟄居を命じられるところ、絶望感に溢れていた。「父上…」が今にも壊れそうな繊細な少年のようで。ママ鏡、「ママは僕の鏡だから」怖い。そうであると信じ続けた彼のアイデンティティが崩壊する様。最後しがみついたあと、花總シシィは断固拒絶、ではなく、息子を助けたい気持ちが少し見えた気がした。それでも最後は腕を引っこ抜いた。

マイヤーリンク。ママにも見捨てられ絶望に溢れているところに「死にたいのか」。死の舞の美しさ。銃を受け取ったとき、「安らぎ」を得たようなほっとした表情からの自死を決意した顔をしての死の接吻。その後、正面を向いたときもほんの少し安らかな表情をしているように見えた。ここの表情が色々詰め込まれたような気がしたんだよなぁ…。

 

いくさぶルキーニのキッチュリプライズ。先週は「憎悪」に満ち溢れていたんだけど、今日のキッチュは、もちろん憎悪もあるのだけれど、どこかやるせなさや悲しさ、虚しさなどが垣間見れた気がした…すごく良かった。 

香寿ゾフィーの凄みがはんぱない…本当に怖い…。「皇后の務め」の「ダメよっ!!」が本当に怖くて怖くて、シシィもそりゃぁ逃げ出すよ…。

そして博多座から中日劇場までシングルキャストとしてやられた万理生フランツ。観客の心配をよそに、毎公演毎公演、全力のフランツを演じていた。全力でシシィを愛していた。悪夢でルキーニに突き飛ばされたあと、けっこうな勢いで吹っ飛んでたけど、本当に体大丈夫だっただろうか…。今日の公演、トートに釘付けになってたから、フランツのラストフライを見れなくて公演後にだいぶ後悔した。

あ、そういえばエーヤンのところ、大我さんがあんまり見えなかったから革命家たちを見ていたのだけど、いつも以上に熱が入っていたような(階段を上るのがギリギリだったような??)。エルマーが発砲した後、城田トートが革命家たちを暗示にかけるようにするとき、広瀬シュテファンの暗示のかかり方がとっても良かった。カフェのシーンよりも「かかっている感じ」がとてもしていて。

 

カーテンコールではしろたんが登場していくさぶとハグ…!!とりあえずここでわたしの涙腺が決壊。

以下、ニュアンスのカテコ挨拶。

・大我ルドルフ:エリザベートのオーディションが20歳の誕生日でした。何もわからない中、出演者の皆さん、スタッフの皆さん、観客の皆さんに支えられて、気持ちよく千秋楽を終えることができました。エリザベートに出演したことで、ミュージカルの楽しさを知ることができたので、またこれから地道に少しずつ努力して色々な作品に出たいと思いました。

・香寿ゾフィー:去年よりも少しでも大きく見せられるようにやってまいりました。まだまだゾフィーという役を深められると思いましたので、またいつかゾフィー役で戻ってこれたらと思います。

大我さん、舞台ではしっかりと芯のある声をしていたから、カテコでの高くてソフトな声のギャップにびっくりしたw そして香寿さんもめちゃめちゃ怖いゾフィーだったのに、カテコでは優しい声でギャップ…!!!となった。

・いくさぶルキーニ:今までは大我くんのルドルフのような役をやることが多かったのですが、30歳という節目にルキーニという役に挑戦させてくださった小池先生はじめスタッフの皆様に感謝いたします。

・万里生フランツ:僕自身、2か月以上のロングラン公演というのは初めてで、途中までは佐藤くんとWキャストだったんですが、数えたら全125回中106回やっていたんです。今年、フランツ・ヨーゼフ没後100年、またハプスブルグ家滅亡から98年です。今年ウィーンを訪れたのですが、いまだにエリザベートが国民に愛されていることを実感しました。そのような愛される作品に出られたことを感謝いたします。

・城田トート:去年トートをやっていたときにすでに今年の公演が決まっていたのですが、どうにかしてやめれないか。ずっと考えていました。いや、笑い事じゃなく。僕のキャパシティを遥かに超えていました。来てくださる皆様に満足していただけるトートができているのか、不安でした。カーテンコールの皆様の笑顔と拍手でここまでやってくることができました。今では、またトートをやることができたら、と思っています。

しろたん…!!!!!!(号泣)

いや、今年の帝劇のカテコ映像見てもらえればわかるんですが、このあと3会場回りきれるんだろうか…??と不安になるくらいネガティブだったんですよ…!!!それがまたやりたいって言ってくれるなんて!!!(号泣)(※誇張表現ではなく、本当に涙腺崩壊していた)博多座で何があったのかわからないんですが、とりあえず博多座ありがとう!!と言いたい。梅芸から中日にかけてのこの飛躍ぶり。すごい。しろたんが褒めてっていうから、全力で褒める!!本当に本当にお疲れさま!!!しろたんのトートがまた観たいです!!!

そして花總シシィ。花總さんがしゃべりだしたときから涙声で、私も涙垂れ流し。

 ・花總シシィ:6月に帝国劇場で始まり、博多座梅田芸術劇場、そして中日劇場と大千秋楽を迎えることができました。小池先生、上垣先生(※指揮者の方)、出演者の皆さん、スタッフの皆さん、各会場のスタッフの皆さん、そして何より毎日劇場に来てくださる皆様に支えられてここまで来ることができました。本当にありがとうございました。皆様の心に何か一つでも残るものがあるように、と演じてきましたが、楽なことではなく大変な日々でしたが、皆様の笑顔が何よりの励みでした。本当にありがとうございました。

花總さんのシシィを見ることができるのは最後なのかな…と薄っすらおもっていたからなおさら涙が止まらない。しろたんもそうだけど、タイトルロールの重圧、人気公演の重圧、凄まじいものがあるんだろうなぁ…。美しくて気高いシシィを魅せてくださって本当に本当にありがとうございました。

 

花總さんとしろたんの2人でのカテコ1回目。しろたんが投げチューしたあとに、花總さんも投げチューを手のひらをふーっと吹いて客席に振りまいてくれた!2回目に出てきたとき、下手の袖から乱入者が!と思ったらいくさぶがダッシュで2人のもとにwwそして颯爽とはけていったwww素で驚いていたしろたんと花總さん。その後、しろたんが花總さんに向けて自分のほっぺを指さして、花總さんがほっぺにチューしてあげてた~。3回目は最後に2人で熱くハグ!!

 

素敵な旅路に参加することができて、本当に楽しかったです。

キャストの皆様、スタッフの皆様、本当にお疲れさまでした。

また、いつの日にか。

 

おまけ。

可知さん大好き…!!!!w

「エリザベート」2016@中日劇場 その2 ~井上・古川・涼風千秋楽~

日劇場での公演も2週目に入り、一部のプリンシパルが千秋楽を迎える時期に突入してしまった。早い。

以下、日ごとの感想。

 

・10/14マチネ:花總、城田、古川、田代、香寿、山崎

・10/15マチネ:蘭乃、井上、京本、田代、涼風、成河

・10/15ソワレ:花總、井上、京本、田代、涼風、山崎

・10/16マチネ:花總、井上、京本、田代、涼風、成河

 

⚫10/14マチネ(古川千秋楽)

最高でした!素晴らしかった!!

まずは本公演で千秋楽を迎えた古川くん、そして子ルドの大内天くん、お疲れ様でした!

花總シシィの美しさと高貴さに見惚れる。城田トートは冒頭からアクセル全開で「私が好きなやつ!」と胸が高鳴った。

この回の座席が1階上手のサイドだったんだけど、この席めっちゃ楽しい…。演者の方と目線があうし(勘違いだろという突っ込みはいらない←)、オケピと客席の間に空間がないから舞台の延長線上に自分がいるような感覚になる。エーヤンの場面とか、自分もハンガリー市民になったような気分。角度的に古川くんが見えないから、シシィとフランツを見てたんだけど、わたしも一緒に\エーヤン!/ってやりたくなった。何より結婚式のあとにトートが現れる場面、城田トートがねちっこくシシィを見つめ続ける視線の延長線上にわたしが。怖い。本当にしろたん怖い。そりゃシシィも怯えるわ。わたしも怯えた←

最後のダンスも「さーー!」のところをキーを上げて歌っててぞくぞくした!何回も言うけど中日のしろたん、本当に良くなってる。東宝の偉い人にこの想いよ届け。

悪夢の場面で、フランツがルキーニに突き飛ばされた姿を見ていた香寿ゾフィーがとても「母親」の顔をしていて…息子を心配している母の顔で……胸に来るものがあった。

育三郎ルキーニがとても良い!濃度が濃くなってる。ミルクで市民を煽るところ、成河ルキーニは市民を上から見ているような嘲笑うものを感じるんだけど、育三郎は皇帝陛下、皇后、いわゆる「偉いやつら」を市民と一緒の立場で憎しみを抱いているところがある。面白い。

古川ルドルフ。おそらく最後であろうルドルフとしての姿を一瞬たりとも見逃したくないという熱意が劇場いっぱいに溢れていた。

美しかった……。必死に人生を駆け抜けた皇太子。闇広、まだトートが見えていないけど「何かを感じている」姿。「君は思い出す」と言われて閉じていた目が大きく開き、トートを見た瞬間、かつての友達との再会に驚いた姿。友達に心のうちをさらけ出す姿。そしてトートに唆されて独立運動に身を投じることを決意する姿。「我慢できないー!」「王座ー!」で眼の色が変わり、力強く歌う姿。どれもこれも美しい。城田トートと古川ルドルフの画が美しすぎて。マイヤーリンクでは死に魅せられた舞、そして必死に死に抗おうとする青年の命。死の接吻のあとに正面を見据えた表情が、この世のすべてから解放された澄んだ表情に見えて胸がいっぱいになった。あ、この日初めて認識したんだけど、古川ルドルフは引き金を引いた後、目を開けたままトートダンサーに運ばれていくのですね…いつもトート見ていたから気が付かなかった。。

帝劇、梅芸と変化と進化をとげた古川ルドルフの集大成。もう見ることはできないんだろうな、という寂しさも感じるのだけど、それ以上に「素晴らしいルドルフをありがとう!」と晴れ晴れとした気持ちになった。

カーテンコールで「途中シングルになって、思ったよりも大変で」と仰ったときは「梅芸のことですね…」とあまりの正直さに笑いそうになった。(博多座のときはシングルでも思ったよりも大丈夫だったってブログに書いてたから!w) あとは次はルドルフではない役で、と言っていて、しろたんが「トートは?」→古「いや、それは偉い人が決めることなので!」とお言葉いただきましたが、ぜひぜひ古川くんのトートを見てみたいなと!思っていますよー!!

本当にお疲れ様でした!

 

 ⚫10/15マチネ

芳雄さんが絶好調すぎる。声量はんぱない。1階席だったったのもあったんだろうけど、声の圧がとてつもなく凄かった…。最後のダンスとか、全身の毛穴開いているんじゃないかってくらい興奮した。拍手がなかなか鳴りやまなくて、芳雄トートがマントをバサッと広げてようやく落ち着いた感じ。結婚式の場面では客席後方からステージに歩いていく通路の近くの席で、そばを通ったときのオーラに震えた。一瞬目の前で止まってくれたとき、心臓止まるかと思ったよ…。

蘭乃さん、見納め!梅芸の凄く良かった回に入ったからどうしてもその回と比べてしまうのだけど、うーん…1幕途中まで歌いづらそうだったかなぁ。表情はすごく豊かで可愛くて好きです!バートイシュルの場面は本当に可愛い。「鹿さん!鹿さん!」と上の台にかけ上がって座ったあと、下にいる成河ルキーニと目があったかと思うと二人でパカッパカッと鹿が駆け回ってるしぐさを現すように手をくるくるしてて、あまりのコミカルさに笑みがこぼれてしまった。「私だけに」は持ち直してくれて、良かった。「自!我!」というのをすごく感じる蘭乃シシィ。そりゃあゾフィーとそりがあわないっしょ~というのがすごく腑に落ちる。己の自我でハプスブルク家を破滅へと導くさまが圧倒的でした。

大我ルドルフ、美しかったー!!

不安な顔と国を建て直したいという志に溢れた顔が交互に現れて、ルドルフの不安定な心情がよく現されてた。トートから受け取った銃を悦の表情で見つめる大我ルドルフ、耽美…。死を決意したというよりは、死の魅力に取り憑かれたよう。そのあと死の接吻からの自死

ゾフィーの死」で涼風ゾフィーは事切れる前にフランツと言っていた。でもその前の歌終わりにもなにか呟いているんだよなぁ…読み取れず。帝劇では事切れる前にふっと微笑んだようなお顔をしていたのだけれど、中日では苦しそうな表情のまま。

可知さんをマデレーネ以外で初めて判別できた!嬉しい。私の目が正しければ、昆布のところは下手の女官、ミルクは最後一列になったときに最下手に、エーヤンは真ん中辺りに紛れてて、hassのあとに旗が落ちてきた後は真ん中辺りで旗を持って睨みつけている…はず…。女性アンサンブルさんはお化粧と衣装で全然違う印象になるから、本当に判別が難しくてだな。

1幕ラストの三重奏の万里生フランツがとても良かった。以前はもっと強い口調というか硬い声で女官たちに話しかけていたと思うんだけど、少し声が丸くなったというか、優しさを感じられる言い方になっていた。自分のなかでシシィとゾフィーのどちらを選ぶのか、必死に考えて、シシィへの愛を選んだのが痛いほど伝わってきた。

成河ルキーニ、好きだー。

un grande amore!!

トートとシシィの間に芽生えた愛について語っているようだけど、本当はシシィを自分に殺させてくれたトートと自分(ルキーニ)の愛だと思っていそう…。冒頭の昆布のところで成河ルキーニが棺の階段にいて、トートに腕を必死に伸ばして何かを取ろうとしている姿。これって悪夢のラストのシーンでトートから刃物を受け取るとことまったく同じなんすよね…ただ刃物があるかどうか。もともと成河ルキーニにはトートへの狂信的な愛を感じていたのだけど、やっぱり全てはそれなんだろうなぁ。悪夢の場面は舞台下手でトートとフランツの応酬には関心なさそうにしていた。ルキーニはトートとフランツどうなろうと関係ない、ただ刃物を与えてもらうことが目的ということか?刺した後にルキーニはトートに手を伸ばし叫ぶ。「un grande amore!!!」。トートに自分は愛されているんだとルキーニの壮大な思い違い。最期の場面、トートとシシィがキスをしている横で、自分の首に縄をかけながら嬉しそうな顔していた。「私も死に愛されている!」。そんな感じ。だけどトートはルキーニなんか愛していないよね。死後、ルキーニは安らかに眠ることができず、100年間も同じ質問を裁判官にされ続けているんだから。

あ、そういえばお見合いの場面、リヒテンシュタインとグリュンネ伯爵たちのところにふらーっと行ったと思ったら、臭いやつがやってきたみたいな感じで二人が鼻をつまんでて笑ったw

この回が蘭乃さんと芳雄さんの組み合わせが最後でして、カテコ3回目に芳雄さんから蘭乃さんをハグ!蘭乃さんも涙を拭っていたような。そして4回目のカテコでは一礼したあと、肩を組んでお手振りしてくれた。可愛かった~。

 

 ⚫10/15ソワレ

芳雄さんがやはり絶好調。マチネは1階だったからというのはあったと思うんだけど、2階席なのに声の圧を感じるって凄すぎでしょ…。体操室の場面、ドクトルの姿からトートに戻って椅子に横たわるときにシシィがつけてたコルセットを長い足で蹴落としていたところにときめいた← 

「私が踊るとき」の花總シシィ。トートに勝利を告げたくて、まるでトートが現れるのを待っていたかのよう。あーかっこいい。

大我さんのエーヤンがよく見えたような?あれ?2階だから?古川くんから引き継いだ?← 独立運動に対する不安と気概が交互に現れる表情が秀逸。闇広、芳雄トートの飴と鞭の加減がたまらない。「見ていていいのか?」と圧倒させたあと、「未来の皇帝陛下」と頬を撫でながら柔らい声(だけど断ることのできない圧力)をかける。それに乗せられる大我ルドルフの「我慢できないー!」。カフェの場面、前は「ハンガリー国王!!」と声高に言っていたと思うのだけど、中日はどちらかというと自分では想像もしなかった選択肢が出てきて、思わず口に出して言ってしまったという感じになっていた。あと以前は本当に独立運動に参加してよいのだろうか?と不安な表情が気づくと出ていて、「チャンスはないぞ」のところでようやく決断していたと思うんだけど、ソワレは階段を降りたときにはすで決心していた。革命家たちと握手するときの眼に意志を感じた。それでも革命中は不安な表情がどんどん出てきて、敗れた後に名乗るときの「……ハプスブルグ」が絶望に溢れてて。ママ鏡は「孤立無援」のところを頭を横に振りながら歌うのがもう…庇護欲掻き立てられる←。シシィの手を自分の頬に持っていき、少し抱きつくんだけど、花總シシィがその腕を手で掴んで離すんじゃなくて、指で外してたんですよ…。「触りたくもない」、そんな感じ。これは…辛い。

マイヤーリンクも美しい。芳雄トートにふわっと暗示?をかけられた後に無の表情になって舞う。はっと気がついて必死に「死」に抗おうとする。最後には銃を受け取って、死に魅せられたような笑みを浮かべてからの死の接吻。表情が失われるのが見事なんだよなぁ。

育三郎ルキーニが最高。キッチュのリプライズが、「嘲笑」を通り越して「憎悪」だった。ものすごく怖かった…だけどものすごく良かった…。そういえば、カフェの場面で芳雄トートが革命家たちとはけるときに、育三郎ルキーニの頬を触ってはけていったんだけど??私の幻想じゃないよね??(他の人のそういうレポを全く見ないので不安)。

お見合いのところ、マチネの成河ルキーニとどう違うのかな?と思って見てたら、リヒテンシュタインたちのところに行ったはいいものの、「何か変な奴来た」みたいな感じでシッシッと手であしらわれてた(笑) お見合いのとことか結婚式のとことか圧倒的に目が足りない!

涼風ゾフィー、2幕の歌い出しがオケとずれてヒヤッとした。ゾフィーの死の場面、マチネと変わっていた。事切れる前に「フランツ」とは呟いていないし、歌い終わりになにか呟いているんだけど「フランツ」ではないような…?

芳雄トートと育三郎ルキーニのラスト回。カテコ1回目のときに、芳雄さんが拍手のなか登場したと思ったら、はけようとしてた育三郎をハグしていった!

 

●10/16マチネ(井上、涼風千秋楽)

芳雄さんがこれでもかっていうくらい絶好調。最後のダンスの「おーーーーーーーーーーーれぇぇぇぇ    さぁーーーーーーーーアアアアアア↑↑↑↑↑↑」みたいな感じ。本当に絶好調。やっぱり絶好調。体操室の場面もノリノリで面白かった(誉めてる。「それはこの俺っd」「うぁぁぁぁぢがうっっ!!」とだいぶ食い気味に花總シシィが拒否してて面白かった(誉めてる。

ゾフィーの死」でね…涙が出てきた。妻としての喜び、母としての喜びを殺してただただ「皇帝陛下」を育てることだけを考えて生きてきたゾフィー。それなのに息子からは絶縁みたいな感じで言われちゃうし、あぁ辛い…。事切れる前には何も言わず、歌い終わったあとに何か言っている。やはり「フランツ」ではないような…。

独立運動の場面。「ハンガリー国王」と言って階段を下りる前ではなく、前に出てきて眼を閉じて顔をすっと上げて顔を戻したときにはすでに決意が固まっていた。革命家たちとの握手も固い。父親から蟄居を命じられた後の「父上……」が、もう…信じられないというような絶望を感じた。ママ鏡からのマイヤーリンクでも泣けた。言うてもわたしエリザ何回も見てるけど、涙が出てくることってほとんどなくて。いや、ほんとに大我ルドルフがとても良かった。シシィの手に頬を当て、少し抱きつくけど、シシィに外されることなく落ちた手。その手を信じられないように見つめ、両手を抱え込んでの「ママも見捨てるんだね」。マイヤーリンクで銃を受け取った瞬間に悦の表情で愛しいような手つきで触ってから、すっと何かを決意してからの死の接吻。いつもより長めだったような?その後の無の表情。あぁ、美しい。

葬儀の場面でトートに死なせてくれと願ったのに断られたあと、花總シシィ笑っていた。声に出して笑っていた。そしてルキーニに写真を撮られた後の絶叫。ぞわっとした。

あとはやっぱり成河ルキーニが最高でしてね…。ミルクの「さぁ!」と「今っ!」のあの歌い方が最高じゃない??市民を嘲笑いながら、火に油を注ぐことを楽しんでいるような悪い声…!痺れる。育三郎ルキーニのミルクは市民と同じ側にいる感じがするんだよなぁ。市民と同様に「偉いやつら」に怒りを感じている。同じ「さぁ!」「今っ!」という歌詞なのに憎しみをとても感じる。Wキャスト面白いなぁ!

そういえば「夜のボート」の終わりに口笛を吹きながら登場したときは、「お、お前…!!」ってなったよ(誉めてる。

カテコでは涼風さんと芳雄さんからご挨拶。涼風さんが涙声になりながら「私がカンパニーで一番年上なんですけど、皆に支えてもらって…」と。そしてこの日の公演にはいない蘭乃さんやしろたんなどのプリンシパルに感謝を述べて、「そしてもう一人の素晴らしいゾフィー様に感謝申し上げます」で私の涙腺崩壊。芳雄さんからは「いつもは早く終わらないかなって思うんですけど、今日は終わらなければいいのにと思いながらやっていました。」「ルドルフで初舞台を踏ませていただき、トートとして帰ってくることができました。トートの次にやる役はありませんので、ぜひ!次もトートでお願いいたします!」とお言葉いただきました!観客の\フーーーーーーー!!!!/という歓声と盛大な拍手。

カテコ3回目では芳雄さんから花總さんをハグ!の後に花總さんが芳雄さんの首を「なんで先に終わるのー!!」って感じで絞めてたww 5回目のカテコでは芳雄さんがガバッと花總さんを熱い抱擁。幕が下りる間際には投げキスもくれました~。

芳雄さん、涼風さん、本当に本当にお疲れさまでした!!!!

そして成河さん見納めだったのだけど、こんなに素敵な役者さんに出会えてとても楽しかったです!!残りの公演も頑張ってください!

 

エリザベートの長い長い旅路が終わりを迎えようとしていますね。。。どうぞ最後まで無事に駆け抜けられますように!!! 

「エリザベート」2016@中日劇場 その1

梅芸後半のチケットを探していこうかと悩み続けた日々が去り、とうとうエリザベート最終地の中日劇場がやってきました。あっという間に最終地……。

まず劇場に入って思ったのが、舞台近っっ!!!

演者さんたちが劇場入りしてTwitterでよくつぶやいていたのが「客席との近さ」でしたが、本当に近い。最前列、おけぴの真後ろ。人が通る隙間ないけど、キッチュとか結婚式の場面、どうなるんだろうって思ったら、やっぱり客席降りての下手・上手への横移動はなし。ですよね~。お陰で2階席でもキッチュ見れた。良かった。

あと全体的に舞台がきゅっと圧縮されたというか、コンパクトになっていた。一視野で見えるものが増えて嬉しい。以下、日ごとの感想。

 

・10/8マチネ:花總、井上、古川、田代、涼風、成河

・10/8ソワレ:蘭乃、城田、京本、田代、香寿、山崎

・10/9マチネ:花總、井上、古川、田代、涼風、山崎

・10/10マチネ:花總、城田、古川、田代、香寿、成河

 

●10/8マチネ

花總シシィが梅田よりも凄く良くなってた……なんだあれ。エリザベートだった。「私だけに」でぽつりぽつりと歌い出すところから目が輝いて「自我」が芽生えていく過程が丁寧に演じられていた。1幕ラストでの三重奏の扇子を開いて顔を隠す直前のお顔が!自信に満ち溢れていて、高貴なオーラが凄くてゾクッとした。

「私が踊るとき」も素晴らしかった!!勝ち誇ったお顔が!美しい!歌声も素晴らしい!精神病院も、細目の声で歌うのではなく芯のある声で歌っていて切なさが増す。

芳雄トートはいつ見ても絶好調。無敵か。圧倒的な歌声。

古川ルドルフ。梅田ではちょっと心配してた部分もあったんだけど、中日は帝劇路線に戻ったかな?眼差しの強さが戻っていた。エーヤンも笑顔だったし、ミルクも力強く踊っていた。しかしまさかの旗が降りてこないハプニング。裏方さーん!しっかりー!劇場中の空気が一瞬止まった。トートが出てこるなくなるじゃん、どうすんのとドキドキしてたら、バサッといきなり落ちてきた。「とりあえず落とせ!」的な?笑 

そんなこんなあったけど、闇広は上パート歌ってたし、体調も良いよう。強いルドルフの印象が戻ってきたけど、マイヤーリンクの舞はやはりどこか死を感じさせる。銃を受け取ろうとする前の抵抗してた。だけど抗いきれない死への欲求。銃を受け取ってから自死の決意をして、死の接吻。ちょっとキスの前にためがあったような?その後は一瞥もせず引き金を引く。

葬儀の場面でトートにまだ俺を愛してはいないと言われたあと、花總シシィはむせび泣くのではなく笑ってた。乾いた笑い。ゾッとした。

初めて見たというより、初めて視線をそちらに向けたのだけど、悪夢のとき、成河ルキーニは舞台の前の方で顎に手をついて関心なさそうに客席側を向いているんですね。それがトートに呼ばれたら犬みたいに尻尾ふって刃物を受け取りに行っていた。これ、いつもそうだったのかな?

あ~ラストの場面、美しかった……

 

●10/8ソワレ

蘭乃シシィ、梅田がすごく良くなってたのでとても期待していたのだけど…!うーん。個人的に梅田のほうがかなり良かったかな?ちょっと声が出しにくそうだった。

城田トート、本当に良くなっていってる。活き活きしている。子ルドとの場面、目がギョロっとして子ルドを見つめてて、すごく怖かった。獲物を見つけた感じ?気を抜くと喰われちゃうぐらい。それは独立運動のカフェの場面でも。大我ルドルフをギョロギョロ見てた。悪魔や…いや、「死」でしたね…。ルドルフはトートから逃れられないって確信してしまう。怖い。

最後のダンスも歌い方アレンジしていた。好き好きー!梅田よりもすごく良くなっているよ!どうか映像残して!東宝さま!

大我ルドルフ。帝劇以来。ルドルフのあとはアイドル稼業をずっとしてたから、どうかな?ブランク感じちゃうかな?って心配していたけどそんなことなかった。杞憂。むしろずっと良くなってたのでは。昆布のシーンで出てきた瞬間、「美…」と見とれてしまった。メイク薄めに感じたけど、どうなんだろう?素っぴん?美人さん~。昆布で踊るところ、ついこの間までアイドルをしてたからか、一人ダンスの切れが良かったw

国を建て直したいという若い志が感じられる大我ルドルフ。闇広、大我さんの「王座ー!」が大好きなんだよ…。革命家たちに持ち上げられて「チャンスはないぞー」のところで目の色ががらっと変わるところも好き。マイヤーリンク、軽い。魂がもうこの世にはない舞。銃を受け取ってじっと見たあとに城田トートとの死の接吻。そのあとの虚無の目。美しい…。

育三郎ルキーニ。育三郎成分がかなり薄まっていて、犯罪者の香りが濃くなってた…!とても良い…!

 

●10/9マチネ

すごく良かった。すごくすごく良かった…!震えるほど良かった。泣きそうになるくらい良かった。各キャストがみんな素晴らしかった!!

花總シシィ。前日も素晴らしいと思ったんだけど、この日はもっと素晴らしかった…。天井知らず。心の声が気がついたら歌になっていた。感情が歌に乗ってて。「私だけに」の高まりが鳥肌。三重奏の凛としたお顔もたまらない。

「私が踊るとき」も、エリザベート様…!ってひざまずきたくなる。美しくて気品に溢れてて自信満々で。「邪魔しないで!」のところがねー、本当に好き!!痺れる。精神病院のところ、わたしの席からだと後ろについてるスターレイも一緒に見えたんだけど、シシィの孤独をスターレイも辛そうに聞いていて、泣けてきた。今日の花總シシィは人生を全うしていた。全力で生きて、泣いて、つまずいて。最後にトートから自由を与えられて飛び立っていった。

芳雄トート。見るたびに今日も絶好調ですね!と言いたくなる。化け物か。フランツに対する嫉妬心みたいなのがちらちら垣間見れてたまらない。圧倒的ですよ、芳雄トート。子ルドの「猫をころしたー」の場面で、今回芳雄トートが驚いていなくて、あれっ?と思ったので観劇後に友達に聞いたら、子ルドが銃の撃鉄を上げられなくて音が鳴らなかったから驚けなかったと教えてもらった。見ているようで見えていない…わたしの目は節穴だらけ…

古川ルドルフ。一人の皇太子だった。革命家でもなく、怒れる皇太子でもなく、死にそうでもなく、ただただ皇太子だった。国を変えたいという気持ちで独立運動まできたルドルフ。闇広凄く良かった。「王座ー!」と叫んだときにはすでに覚悟は決まっていた。やってやるんだという意思が見えた。名乗るところもハプスブルク!と声高に告げていたし、父上っっ!と叫んでいた。蟄居を命じられた後もまだ国を変えたいという思いが感じられた。ママ鏡でシシィに懇願して拒絶されたあとの「ママを見捨てるんだね」からのマイヤーリンク。たまらない。梅芸のときの死にそうなルドルフではなく、帝劇のような死なないルドルフでもなく、一人の青年ルドルフとして生死の境目にいた。もしかしたら「生」という選択肢もあるんじゃないか?と思ってしまった。それくらいどっちに転んでもおかしくない。それでも抗えない死という選択。銃を受け取ったあとの意思が固まった眼光。トートと死の接吻をしてからの眼が…なんというかわたしには澄んだ眼をしているように見えた。全力で駆け抜けた若い命。人生を全うしたわけじゃないんだけど、そのようなものを感じた…。ただただすごいものを見てしまった、そういう感覚になった。

育三郎が育三郎成分薄目のルキーニ。すごくいい。ミルクの煽動ぶり今まで見たなかで一番。悪い顔しながら市民を煽っていくあの様。ほんとよい!

各キャストがベストを出し尽くすとこんなにも素晴らしいのかと。泣けてくるほど素晴らしかった。

 

●10/10マチネ

花總シシィがもうずっと素晴らしくて。もうねー、花總シシィの「私が踊るとき」が本当に大好き。かっこいい。痺れる。邪魔しないで!が力強くてひれ伏したくなる。

城田トート。1幕は目を閉じながら歌っていたりとねちっこくじっとり歌う感じでスタート。後半にかけてどんどん上がってきた感じかな?しかし、全体を通して帝劇や梅芸よりずっと良くなっている。本当に中日の城田トートをDVDで残してくれませんか!?東宝さまー!!

古川ルドルフ。素晴らしくて。ただただ国を建て直したいと、国の将来を憂う皇太子だった。闇広が好きだー!「王座ー!」と叫んでからの目の力が強い。独立運動で敗れたあともまだ諦めてないように感じた。ママ鏡で母親に懇願するとき、「ママ」ではなく、「ハンガリーを助けたエリザベート」にお願いしていたように感じた。だけど、シシィが関わらないでというオーラがとんでもなく凄かった。なぜそんなに拒絶する?抱きついた腕をシシィに外されることなく、だらんと落ちていた。「ママも僕を見捨てるんだね」。もしかして僕=ハンガリーなのかな。父親も母親もハンガリーを助けようとしてくれない。父親ハンガリーに問題があるとは思っていないし、母親は昔の話だと言っている。昔の話……ゾフィーから必死にルドルフを取り返そうとした頃……。「今のハンガリー」「今のルドルフ」を誰も直視しようとしていない。「僕もハンガリーも見捨てられた」。孤立無援、誰も助けられない、ママだけがパパを説得できる。どうにもならない現状…。

あーでもなんか違うかな。それはどっちかっていうと大我ルドルフだ……。そんな感傷的なものではなく、「母子」というより「皇后」と「皇太子」というか…うーん、言語化できない(諦めた。

でもそんな状況でもまだこの時点ではルドルフに「死」という選択はなかったのではないかな?と思った。それなのに「死にたいのか?」と惑わすトート。 マイヤーリンクは生と死の間をめまぐるしく行き来していた。トートから銃を受けとる直前まで古川ルドルフは「死」に抗っていた。死の接吻からの自死の場面、本当に美しい。今の古川ルドルフ、大好きです!

成河ルキーニは相変わらず不穏な空気を醸し出しててぞくぞくする。初日も思ったのだけど、最後の悪夢の場面で「オルレアン公を殺すつもりだった」の言い方が変わりましたよね?今まで私が観劇した公演では少し声が震えて、刃物を見つめていたと思うんだけど、中日はなんというか虚を突かれたような、「そういえば、自分は何をしに来たんだっけ?」と素に戻ったというか、そんな声と表情だった。成河ルキーニの回は、彼の妄想の中のエリザベートとトートの話なのではないか?と思わせる力があるのだけど、その声と表情でわたし自身も一瞬悪夢から目が覚めるような感覚になった。でもそのあとからルキーニの独白が始まって怒濤のラストを迎えるのでほんの一瞬のことなんですけどね。

 

帝劇、梅芸からの中日劇場。各キャストが本当に素晴らしくて!毎回毎回感動する。今週末からは千穐楽を迎えるキャストの方々もいらっしゃって、エリザベートの終わる足音が聞こえてきていて耐えられない。エリザが終わった後の自分が想像できない…。

 

どうか、無事に千穐楽まで駆け抜けられますように…