ただの備忘録

未来の自分に贈る、舞台の記憶と感想

「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」@世田谷パブリックシアター 2017/11/12

この舞台が発表された時に「こりゃチケット争奪戦になるね…」と思い、取れたらラッキーくらいで先行抽選申し込んだら、運良く取れたので行ってきました。3階席だったのですが、1階と3階に立ち見のお客さんもぎっしりいて彼らの人気ぶりを目の当たりにした。生の斗真さんは震災後の渋谷(原宿?)の募金の時にステージにいたなぁと懐かしく思い出してたんだけど、最近どっかで見た気がすると思い返したら「デスノート」の大千穐楽公演にワイルドホーン夫妻と観劇してたのを見かけたんだった。めっちゃ最近。(話は変わるけど、世田パブの3階がめちゃめちゃ寒くて辛かった…11月なのになぜ送風があんなに…)

 

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作:トム・ストッパード

翻訳・演出:小川絵里子

ローゼンクランツ:生田斗真、ギルデンスターン:菅田将暉

ハムレット林遣都、座長:半海一晃、オフィーリア/ホレーシオ:安西慎太郎、

ポローニアス:松澤一之、ガートルード:立石涼子、クローディアス:小野武彦

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演出の小川さんは今年シアターコクーンで上演された「令嬢ジュリー」を観劇したのですが、この演目は感想を述べるのがまぁ難しくて、古典というか戯曲は予習した方がいいなと学びました。今回話の筋である「ハムレット」は中学生ごろに読んだ覚えがあるけどなんとなくしか記憶に残っていなかったので、以前NHK BSで放送していたジョン・ケアード演出、内野聖陽さん主演の舞台「ハムレット」を観たのですが、「観といて良かった!!」と心底思いました(ジョン・ケアード版「ハムレット」面白かった) 

 

シェイクスピアの悲劇「ハムレット」の最後の最後で、「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ・・・」の一行だけで片付けられてしまった、憐れな2人組「ローゼンクランツ」と「ギルデンスターン」。 本家ハムレットでは、どうあがいても日の目を見ることのない影の薄い2人組を、堂々の主人公にクローズアップした、いわば『ハムレット』のスピンオフ戯曲が本作です。(SIS conpanyサイトより) 

 

ハムレットのスピンオフ戯曲ということで少し構えていたけど、ロズとギルのかけあいが可愛くて面白かった~~まさにチラシの写真通り。起きたことに対して疑問も持たずに素直に受け入れるロズとなぜそうなったのかと理詰めで考えるギル。テンポの良い会話劇。かなりの台詞量を淀みなく話す姿に「菅田くん凄いな…」と唸った。インタビューで演出の小川さんが語っておりましたが、ロズギルの背後で「ハムレット」の内容が粛々と進み、彼らの行く末が不穏になっていくけれども斗真さんのロズの素直さだったり可愛さが物語を悲劇にさせない「救い」になっていた。

 

不条理。時代の大きなうねりに抗うこともできず、むしろ自分達が巻き込まれていることにも気づかぬまま、突然目の前に死が訪れていた二人。ハムレットが書き換えた手紙を読んだとき、彼らは「どうして?どこで誤った?」と考え、城の使いが自分達を訪ねたときに断れなかったときだと行き着く。でも分岐点はそこだけじゃなくて、遡ればハムレットと学友にならなかったら、親しくなっていなかったら、同じ学校に入っていなかったら、クローディアスが自分達のことを覚えていなかったら…いくらでも考えられる。のほほんとしたロズだけじゃなく、理論的に考えようとするギルでさえも死を避けることのできなかったというのが凄くリアルだなぁと思った。どうにもならない運命。

 

私にしては珍しく開演20分前から席に着いていたのだけど、入ったとき「わたし劇場間違えた?」と一瞬ヒヤッとした。舞台上に脚立やらパイロンやらが置かれているし、照明も下がっていて、なんなら袖からドリルやトンカチの音が聞こえていた。別の公演の舞台セット設営中なのかと思って、凄くそわそわした。これも演出の一部なのかなとじっくり見ていたのだけど、階段のところに無造作に2枚の白い布が落ちていたんですよね。それが凄く怖かった。行き倒れて亡くなった人に布をかけた、そんな感じ。10分くらい前からスタッフ(?)の人たちがモップかけたり、照明のフィルター替えたり、舞台上にあるものを片付け始めたんだけど、その2枚の布をてきぱきと畳んでいるのを見て、ロズギル二人の死が淡々と作業的に片付けられたように感じて、まだ始まってもないのに悲しくなった。

そして舞台袖からスタッフによって板が運び込まれたと思ったらその後ろにロズギルがいて、舞台が始まった。「どこから始まったのか」、ロズギルの運命だけでなく、舞台そのものもこの問いを投げ掛けられてるようで面白い。

 

ハムレット役の林くんが凄く良かった!ハムレットって苦悩や怒りに溢れている役柄だと思うんですが、林くんのハムレットは冷徹で新鮮だった。ポローニアスを殺してしまった後も、淡々とその死体を運んで、その場面にロズギルに遭遇しても何事もなく引き返す姿に笑ってしまったけど、イギリスに向かう船上で、手紙を書き換えた後にパラソル立ててサングラスかけて寛ぐ姿はとても気味が悪かった。

座長役の半海さんはときどき狂言回しとして語るんですが、それがまたヒュッと背中が寒くなるような怖さがあった。

 

舞台のラストは「ハムレット」と同じ。ロズギルの最期の描写はなく、ホレーシオのみが生き残り、イギリス大使から「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ」と報告を受ける。その言葉を聞いたときに、「ハムレット」を観たときには感じなかった悲しみと愛しさが湧いてきた。

ハムレットを観るたびに、わたしはこのロズギルの2人を思い出すんだろうなぁ。

 

翻訳本買おうか迷ったけど、タイモンとリチャード三世が待機していたので一旦保留。タイミングを見て読みたい!