ただの備忘録

現場を振り返ることを枷にして記憶の定着を図る。つまりただの備忘録。(主に舞台の感想)

「アテネのタイモン」@彩の国さいたま芸術劇場 2017

舞台が発表された時にそうそうたる面子に慄いたけど、トレーラーが公開されたときはテンションだだ上がった。柿アルシバイアディーズ、にやって笑うとか…!!!!衣装もおたくホイホイじゃないか!!!くそ!!!!!好き!!!!!! 

 

www.youtube.com

 

シェイクスピアは難しいという先入観があったので、今回翻訳を担当した松岡和子さん訳の本を購入。 発売直後に書店で購入したときは、舞台のビジュアルが入った帯がついていた。

本を読んだ感想としては「舞台でやって面白くなるんだろうか…理解できるのな…」という不安。あらすじにある通り、お金持ちのタイモンが自分の財産を分け与えて続けた結果破産。友達と信じていた人たちに見捨てられ、人を恨みながら森で隠遁する。そして死ぬ。というストーリー(めちゃくちゃざっくり)。

 

さいたま公演は12/15(初日)、12/16ソワレ、12/23マチネ、12/26ソワレの計4回観劇。千穐楽も行きたかったけど、仕事が納まるかどうかという佳境に入っているこのくそ忙しい時期に休めないのは最初から分かっていたので、26ソワレをmy楽に。この日は収録カメラが入っていたけど、DVDにしてくれるのかしら?買うよ??ホリプロさま売ってくださいね??(圧)

 

------------------------------------------------

演出:吉田鋼太郎

出演:吉田鋼太郎藤原竜也柿澤勇人横田栄司
大石継太、間宮啓行、谷田 歩、河内大和、飯田邦博、新川將人、塚本幸男、二反田雅澄、他

------------------------------------------------

 

以下、ネタバレ。

まず驚いたのが、開演10分前くらいから演者が舞台上でアップを始めているというシステム。初日はゲネプロが終わったばかりなのかと思ってしまったw スッと入ってくる横田さん、ぴょんぴょん跳ねながら入る柿澤さん、最後にのそっと入ってくる藤原くんと観ていて面白かったww 鋼太郎さんは「寒くないですか?」とか前方席の方々に言葉をかけながら入って、「頑張ります」って小さくガッツポーズをしているのが可愛かった。

こんな感じのガッツポーズ

 

幕開けはワルツ。どうしても目が柿澤さんを追ってしまう~。前方席で観劇した時、相手の女性と会話していたけどそれが台詞なのか単なる会話なのか(感覚的には後者だったw)。

タイモン邸での晩餐は「最後の晩餐」を模していて、横1列に12人が席に着いて食事をしている。スローモーションになるところはほぼ最後の晩餐の絵と同じ構図になっていた(はず)。最後の晩餐ではヨハネにあたる位置(タイモンの右隣)に座っているのがアルシバイアディーズなのですが、「十二使徒とのうち最も年少」で、聖書では「イエスのすぐ隣には、弟子たちの一人で、イエスの愛しておられたものが食事の席に着いていた。」と記されているとのこと(Wiki+α調べ)。悲しいかな、アルシバイアディーズはタイモンのことを1人の人間として敬愛しているけど、タイモンにとってアルシバは憎むべき人間の1人なんですよね。と、Wikiの出典を調べていたら同じヨハネによる福音書にこんな記載も。「『わたしのパンを食べているものが、わたしに逆らった』という聖書の言葉は実現しなければならない」(13章18節) この晩餐会、「お流れをこちらにも!」とタイモンが自分のパンやワインを分け与えている演出になっていたけど、これは分け与えた人たちに裏切られるという未来を暗示していたのかなぁ(唯一アペマンタスはタイモン邸の食事はとっていない)。

 

お金の用立てをお願いしに遣いの者がそれぞれ友人(と思っている人)たちの家を訪ねるのだけど、三者三様の断り方が面白かった。お風呂の最中に立ち上がった瞬間にお花で隠すとかwww そうそうちょっと気になった役者さんがおりまして、ルーカラス役の谷田さん。めちゃめちゃかっこよくて色っぽくないっすか???アウトレイジ出てましたよね??(完全にイメージ)(アウトレイジ見ていません←) アウトレイジに出てきそうな威圧感最高でした。本にも出てきた「ララララ」をどう処理するのか気になっていたのですが、ちゃんとラララしてたw

 

客席での演出があるっていうのは事前に知っていたんだけど、こんなにも使うとは思っていなかった!!!特に柿澤さんのアルシバイアディーズ追放の場面。ぐるぐる回ってる。2周くらいしてるんじゃなかろうか。有難いことに前方の席に入ったとき、通路側に近くて見上げるようにお芝居を観ることができて迫力にビリビリした。あと噂通り良い匂いがしたw 翻訳本あとがきにもあるように、アルシバイアディーズの背景とか人物像とかがあまり書かれていないので、「なぜそんなにタイモンを助けようとした?」という疑問が本を読んだときも感じていて。それは芝居になっても拭いきれないところはあるのだけど、アルシバイアディーズとタイモンが出会うときの柿アルシバの本当に嬉しそうな顔つきとか、晩餐会のときにお金と女ではなくタイモン自身に敬意を表しているところから、将軍として名を成したタイモンを一軍人として尊敬していて、元老院の仕打ちは軍人を陥れるように感じて耐え切れなかった、というところなのかな。いやぁそれにしても柿アルシバの追放の場面の迫力は凄い。D列(?)の2席を客入れずにそこに立ち上がれるようにしていた。ただ前方席だと左右振り返ってみなければならないので観づらい。どこがベスポジなのかなぁと考えてみたものの、中~後列だと主に背中を見ることになるし、前列だと振り返らなければならないしで、まぁ結局「自分がどう見たいか」によりますね(‘ω’) 

 

演出では赤色が印象的に使われていた。タイモン邸の前で遣いの者が真っ赤な証文(借金の証書)を掲げて押しかける場面、タイモンがその証文を受け取ってばらまく様子は彼の体から噴き出す血のようにも見えた。最後の晩餐のときの大暴れは手加減一切なし。椅子を投げたり机をひっくり返したり。初日は投げた椅子が板の上で止まらなくてそのまま客席にダイブしそうになっててひやひやしたw「心の底からの怒り」というのを目の当たりにしてぞわぞわした。赤い証文が舞い落ちる様はタイモンの怒りであり燃え上がる邸。それが徐々に落ち葉に変わっていくのは燃え落ちるタイモン邸、腐敗したアテネであり、2幕の森の場面への繋ぎとなっていて美しかった。富栄えていた時の「白」から、裏切られた時の「赤」、そして人間を忌み嫌った時の「黒(こげ茶?)」と視覚的にも明確に移り変わっていった。タイモンは変わっていくけど、周りの人は一切変わっていないのも面白い。アペマンタスは最初から「黒(こげ茶)」、アルシバイアディーズは「赤」。執事のフレヴィアスは「白」かな?

  

2幕はタイモンと各役者のガチンコ勝負といったところ。特にアペマンタスとの応酬。お互い罵りあいながら、唾を相手の顔に吐きかけながら(リアルに)で客席からも「えぇぇ…」と声が漏れてしまうほどw でもちょこちょこ面白い箇所を作っていて、パンを客席に投げたり、花梨の実を藤原くんが顔の横に持ってきたりw それでもちゃんとすぐに真面目な流れに持っていけるのは流石。執事のフレヴィアスとの場面は涙が出そうになった。タイモンは友情を信じて他人に財産を分け与えていたけど、主従の関係にある執事や召使たちはお金の関係で成り立っているから自分をこんなにも慕っていることに気付けていなかったのが寂しい。フレヴィアスが元老院の人を連れてきたとき、タイモンが彫った墓碑の文字をじっと見つめてからその場を立ち去る後姿が辛くて悲しくて。きっとフレヴィアスはもうこの森には足を踏み入れないんだろうなぁと思った。

翻訳本に書かれていない場面で特に大きな違いがあるところが2か所気になっていて、そのうちの1つがタイモンとアペマンタスの2人が「悪党!」「けだもの!」と言い合った後に、タイモンがアペマンタスを掻き抱く場面。本ではそのまま別れているけど、タイモンは人間を信じたかった思いが捨てきれなかったのか。。。あの場面は苦しくなる。そして2つ目は盗賊が改心した後に撃ち殺す場面。初日に見たときはびっくりした。確かに本を読んだ時も「そんな綺麗な話あるかね…」と思ったところでもあったので、タイモンの話の流れとして納得がいった。盗賊たちが足を洗うと言ったときに客席からはくすくす笑い声も聞こえたけど、タイモンが撃ち殺した後さーーーっと静けさに包まれたのにはゾクゾクした。

 

最後のアルシバイアディーズがアテネに進軍してくる場面。元老院の「何か君の名誉のしるしを投げてくれ」に対して、初日はマントを外してその場に落としていたんですが、2日目以降は翻訳本通りに手袋を外していた。その手袋の外し方がさぁ、口で咥えて外してくれるんですよ??ありがとうございますですよ。記憶が怪しい部分もあるんだけど、初日は森でタイモンと遭遇するときから手袋をしていなかったような気がしていて、元老院の問いかけも手袋ではなくて「君のマントか、あるいは何か君の名誉のしるし~」と台詞を言っていたような。。。記憶をねつ造しているかもしれないけど…。演出を変えたのか、ただ単に初日は手袋忘れたか。個人的には手袋のほうが好きなので良いのですがね!

 

美術は秋山光洋さん。特に目を引き付けられたのが、赤い証文が山積みになった部屋のセット。芸術作品のように美しくて、赤色が強烈だった。

 

蜷川さん演出の舞台を観たことがないので、鋼太郎さんの演出がどう違ってどこが同じかっていうのは分からないんだけど、作品として面白くて「シェイクスピアって難しい」という先入観を壊してくれたのはとてもありがたかった。

叫ぶ場面が多いので、演者の皆様におかれましては喉のケアに十分お気を付けくださいませ…。しっかし柿澤さんはほんとに喉が強いなぁと。公演折り返しても掠れない、潰れない。驕らずちゃんとケアしてくださいな…!!

 

兵庫公演も楽しみじゃ~

 


f:id:ta__ma:20180819132317j:image