ただの備忘録

現場を振り返ることを枷にして記憶の定着を図る。つまりただの備忘録。(主に舞台の感想)

「エリザベート」2016@中日劇場 その1

梅芸後半のチケットを探していこうかと悩み続けた日々が去り、とうとうエリザベート最終地の中日劇場がやってきました。あっという間に最終地……。

まず劇場に入って思ったのが、舞台近っっ!!!

演者さんたちが劇場入りしてTwitterでよくつぶやいていたのが「客席との近さ」でしたが、本当に近い。最前列、おけぴの真後ろ。人が通る隙間ないけど、キッチュとか結婚式の場面、どうなるんだろうって思ったら、やっぱり客席降りての下手・上手への横移動はなし。ですよね~。お陰で2階席でもキッチュ見れた。良かった。

あと全体的に舞台がきゅっと圧縮されたというか、コンパクトになっていた。一視野で見えるものが増えて嬉しい。以下、日ごとの感想。

 

・10/8マチネ:花總、井上、古川、田代、涼風、成河

・10/8ソワレ:蘭乃、城田、京本、田代、香寿、山崎

・10/9マチネ:花總、井上、古川、田代、涼風、山崎

・10/10マチネ:花總、城田、古川、田代、香寿、成河

 

●10/8マチネ

花總シシィが梅田よりも凄く良くなってた……なんだあれ。エリザベートだった。「私だけに」でぽつりぽつりと歌い出すところから目が輝いて「自我」が芽生えていく過程が丁寧に演じられていた。1幕ラストでの三重奏の扇子を開いて顔を隠す直前のお顔が!自信に満ち溢れていて、高貴なオーラが凄くてゾクッとした。

「私が踊るとき」も素晴らしかった!!勝ち誇ったお顔が!美しい!歌声も素晴らしい!精神病院も、細目の声で歌うのではなく芯のある声で歌っていて切なさが増す。

芳雄トートはいつ見ても絶好調。無敵か。圧倒的な歌声。

古川ルドルフ。梅田ではちょっと心配してた部分もあったんだけど、中日は帝劇路線に戻ったかな?眼差しの強さが戻っていた。エーヤンも笑顔だったし、ミルクも力強く踊っていた。しかしまさかの旗が降りてこないハプニング。裏方さーん!しっかりー!劇場中の空気が一瞬止まった。トートが出てこるなくなるじゃん、どうすんのとドキドキしてたら、バサッといきなり落ちてきた。「とりあえず落とせ!」的な?笑 

そんなこんなあったけど、闇広は上パート歌ってたし、体調も良いよう。強いルドルフの印象が戻ってきたけど、マイヤーリンクの舞はやはりどこか死を感じさせる。銃を受け取ろうとする前の抵抗してた。だけど抗いきれない死への欲求。銃を受け取ってから自死の決意をして、死の接吻。ちょっとキスの前にためがあったような?その後は一瞥もせず引き金を引く。

葬儀の場面でトートにまだ俺を愛してはいないと言われたあと、花總シシィはむせび泣くのではなく笑ってた。乾いた笑い。ゾッとした。

初めて見たというより、初めて視線をそちらに向けたのだけど、悪夢のとき、成河ルキーニは舞台の前の方で顎に手をついて関心なさそうに客席側を向いているんですね。それがトートに呼ばれたら犬みたいに尻尾ふって刃物を受け取りに行っていた。これ、いつもそうだったのかな?

あ~ラストの場面、美しかった……

 

●10/8ソワレ

蘭乃シシィ、梅田がすごく良くなってたのでとても期待していたのだけど…!うーん。個人的に梅田のほうがかなり良かったかな?ちょっと声が出しにくそうだった。

城田トート、本当に良くなっていってる。活き活きしている。子ルドとの場面、目がギョロっとして子ルドを見つめてて、すごく怖かった。獲物を見つけた感じ?気を抜くと喰われちゃうぐらい。それは独立運動のカフェの場面でも。大我ルドルフをギョロギョロ見てた。悪魔や…いや、「死」でしたね…。ルドルフはトートから逃れられないって確信してしまう。怖い。

最後のダンスも歌い方アレンジしていた。好き好きー!梅田よりもすごく良くなっているよ!どうか映像残して!東宝さま!

大我ルドルフ。帝劇以来。ルドルフのあとはアイドル稼業をずっとしてたから、どうかな?ブランク感じちゃうかな?って心配していたけどそんなことなかった。杞憂。むしろずっと良くなってたのでは。昆布のシーンで出てきた瞬間、「美…」と見とれてしまった。メイク薄めに感じたけど、どうなんだろう?素っぴん?美人さん~。昆布で踊るところ、ついこの間までアイドルをしてたからか、一人ダンスの切れが良かったw

国を建て直したいという若い志が感じられる大我ルドルフ。闇広、大我さんの「王座ー!」が大好きなんだよ…。革命家たちに持ち上げられて「チャンスはないぞー」のところで目の色ががらっと変わるところも好き。マイヤーリンク、軽い。魂がもうこの世にはない舞。銃を受け取ってじっと見たあとに城田トートとの死の接吻。そのあとの虚無の目。美しい…。

育三郎ルキーニ。育三郎成分がかなり薄まっていて、犯罪者の香りが濃くなってた…!とても良い…!

 

●10/9マチネ

すごく良かった。すごくすごく良かった…!震えるほど良かった。泣きそうになるくらい良かった。各キャストがみんな素晴らしかった!!

花總シシィ。前日も素晴らしいと思ったんだけど、この日はもっと素晴らしかった…。天井知らず。心の声が気がついたら歌になっていた。感情が歌に乗ってて。「私だけに」の高まりが鳥肌。三重奏の凛としたお顔もたまらない。

「私が踊るとき」も、エリザベート様…!ってひざまずきたくなる。美しくて気品に溢れてて自信満々で。「邪魔しないで!」のところがねー、本当に好き!!痺れる。精神病院のところ、わたしの席からだと後ろについてるスターレイも一緒に見えたんだけど、シシィの孤独をスターレイも辛そうに聞いていて、泣けてきた。今日の花總シシィは人生を全うしていた。全力で生きて、泣いて、つまずいて。最後にトートから自由を与えられて飛び立っていった。

芳雄トート。見るたびに今日も絶好調ですね!と言いたくなる。化け物か。フランツに対する嫉妬心みたいなのがちらちら垣間見れてたまらない。圧倒的ですよ、芳雄トート。子ルドの「猫をころしたー」の場面で、今回芳雄トートが驚いていなくて、あれっ?と思ったので観劇後に友達に聞いたら、子ルドが銃の撃鉄を上げられなくて音が鳴らなかったから驚けなかったと教えてもらった。見ているようで見えていない…わたしの目は節穴だらけ…

古川ルドルフ。一人の皇太子だった。革命家でもなく、怒れる皇太子でもなく、死にそうでもなく、ただただ皇太子だった。国を変えたいという気持ちで独立運動まできたルドルフ。闇広凄く良かった。「王座ー!」と叫んだときにはすでに覚悟は決まっていた。やってやるんだという意思が見えた。名乗るところもハプスブルク!と声高に告げていたし、父上っっ!と叫んでいた。蟄居を命じられた後もまだ国を変えたいという思いが感じられた。ママ鏡でシシィに懇願して拒絶されたあとの「ママを見捨てるんだね」からのマイヤーリンク。たまらない。梅芸のときの死にそうなルドルフではなく、帝劇のような死なないルドルフでもなく、一人の青年ルドルフとして生死の境目にいた。もしかしたら「生」という選択肢もあるんじゃないか?と思ってしまった。それくらいどっちに転んでもおかしくない。それでも抗えない死という選択。銃を受け取ったあとの意思が固まった眼光。トートと死の接吻をしてからの眼が…なんというかわたしには澄んだ眼をしているように見えた。全力で駆け抜けた若い命。人生を全うしたわけじゃないんだけど、そのようなものを感じた…。ただただすごいものを見てしまった、そういう感覚になった。

育三郎が育三郎成分薄目のルキーニ。すごくいい。ミルクの煽動ぶり今まで見たなかで一番。悪い顔しながら市民を煽っていくあの様。ほんとよい!

各キャストがベストを出し尽くすとこんなにも素晴らしいのかと。泣けてくるほど素晴らしかった。

 

●10/10マチネ

花總シシィがもうずっと素晴らしくて。もうねー、花總シシィの「私が踊るとき」が本当に大好き。かっこいい。痺れる。邪魔しないで!が力強くてひれ伏したくなる。

城田トート。1幕は目を閉じながら歌っていたりとねちっこくじっとり歌う感じでスタート。後半にかけてどんどん上がってきた感じかな?しかし、全体を通して帝劇や梅芸よりずっと良くなっている。本当に中日の城田トートをDVDで残してくれませんか!?東宝さまー!!

古川ルドルフ。素晴らしくて。ただただ国を建て直したいと、国の将来を憂う皇太子だった。闇広が好きだー!「王座ー!」と叫んでからの目の力が強い。独立運動で敗れたあともまだ諦めてないように感じた。ママ鏡で母親に懇願するとき、「ママ」ではなく、「ハンガリーを助けたエリザベート」にお願いしていたように感じた。だけど、シシィが関わらないでというオーラがとんでもなく凄かった。なぜそんなに拒絶する?抱きついた腕をシシィに外されることなく、だらんと落ちていた。「ママも僕を見捨てるんだね」。もしかして僕=ハンガリーなのかな。父親も母親もハンガリーを助けようとしてくれない。父親ハンガリーに問題があるとは思っていないし、母親は昔の話だと言っている。昔の話……ゾフィーから必死にルドルフを取り返そうとした頃……。「今のハンガリー」「今のルドルフ」を誰も直視しようとしていない。「僕もハンガリーも見捨てられた」。孤立無援、誰も助けられない、ママだけがパパを説得できる。どうにもならない現状…。

あーでもなんか違うかな。それはどっちかっていうと大我ルドルフだ……。そんな感傷的なものではなく、「母子」というより「皇后」と「皇太子」というか…うーん、言語化できない(諦めた。

でもそんな状況でもまだこの時点ではルドルフに「死」という選択はなかったのではないかな?と思った。それなのに「死にたいのか?」と惑わすトート。 マイヤーリンクは生と死の間をめまぐるしく行き来していた。トートから銃を受けとる直前まで古川ルドルフは「死」に抗っていた。死の接吻からの自死の場面、本当に美しい。今の古川ルドルフ、大好きです!

成河ルキーニは相変わらず不穏な空気を醸し出しててぞくぞくする。初日も思ったのだけど、最後の悪夢の場面で「オルレアン公を殺すつもりだった」の言い方が変わりましたよね?今まで私が観劇した公演では少し声が震えて、刃物を見つめていたと思うんだけど、中日はなんというか虚を突かれたような、「そういえば、自分は何をしに来たんだっけ?」と素に戻ったというか、そんな声と表情だった。成河ルキーニの回は、彼の妄想の中のエリザベートとトートの話なのではないか?と思わせる力があるのだけど、その声と表情でわたし自身も一瞬悪夢から目が覚めるような感覚になった。でもそのあとからルキーニの独白が始まって怒濤のラストを迎えるのでほんの一瞬のことなんですけどね。

 

帝劇、梅芸からの中日劇場。各キャストが本当に素晴らしくて!毎回毎回感動する。今週末からは千穐楽を迎えるキャストの方々もいらっしゃって、エリザベートの終わる足音が聞こえてきていて耐えられない。エリザが終わった後の自分が想像できない…。

 

どうか、無事に千穐楽まで駆け抜けられますように…