ただの備忘録

未来の自分に贈る、舞台の記憶と感想

「人間風車」@東京芸術劇場プレイハウス 2017/10/1、10/7マチネ、10/9千穐楽

凄まじかった。

2時間25分休憩なしのぶっ通し。観客に休むことを許さない、引きずり込まれるような展開。前半、平川が作った童話を劇中劇のように再現しているときはクスクス笑える内容だったのに、後半からの急転直下。内蔵をギュッと掴まれてヒュッと冷えていく恐怖。

気持ちよく劇場を出ることなんてできないからな…!

 

計3回観劇しましたが、2階席・1階最前列・1階後列と席が様々で、個人的には1階後列が丁度良かったかなぁと。恐怖をある程度避けながら観ることができたので(成河さんの仰る「密度」から遠ざかる見方ですが…)。

 

 

以下、がっつりネタバレです。未見の方で観劇予定の方は観劇後にご覧ください(成河さんも前情報なしに、と仰ってたので!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人生初めての舞台最前が人間風車って、凄まじくヘビーでした。逃げられない。逃がしてくれない。後半ずっとボディブローくらってました。でも初回が2階席だったのはありがたかった。初回で最前だったら恐怖で泣いてたわ、これは。

 

成河さん演じるのは売れない童話作家。自分で作った話を公園で子供たちに聞かせる青年。平川という役は「語れる」役者じゃないと成り立たない。成河さん凄いわ…。童話を語るときの平川がすごく好きだ。劇中劇もあるんだけど、成河さんの語りだけでも十分童話の内容を想像することができる。ワフー(狼酋長)のときの女性、老人、男衆の声の使い分けは成河さんの声を存分に堪能できる。子供たちは平川の話ではなく語りを聞きに来ているのでは?と思ってしまった。わたしも参加したい。

劇中劇はそれはそれで面白いんですけどね!特に小松さん・今野さん・堀部さんの面白さが絶妙。小松さんと堀部さんの姫はパッと見わかんなくて、双眼鏡で確認して噴き出したよww個人的にはオロの話で王に仕える小松さんが踏まれている足の痛みに耐える姿がおかしくてしょうがなかったww痛みで失神しそうになるあの感じ、見事だった!!星野かがやき先生が日替わりって知らなくて、完全に自分のスケジュールでチケット取ったら全部小松さんだった。1回くらい今野さん観たかったなぁ~。だけどフリスクとロウソクは毎回笑ってしまったww

 

矢崎くんはロミジュリ2017のベンヴォーリオ以来。あの可愛くて優しいベンヴォーリオはどこに行ったの???RJ大千穐楽のときに私服で登壇してわたしの目が奪われた、あのぱっつん前髪の可愛い矢崎くんはどこ????って悲嘆に暮れるくらい嫌なやつでした、小杉。TVディレクターというのが納得のチャラさと横暴さ。赤い長財布とか「ですよね!!」って思った。ベンからの小杉は振り幅大きすぎた。でもあれですね、ベンのときはだぼっとした服装だったので気づかなかったんですが、めちゃめちゃスタイル良いっすね…足長くてびっくりした。

 

良知くんはお名前は見かけたことはあるんですが初めましてでした。初っ端のケリーで出てきたとき、綺麗な顔だなぁとまじまじと見てしまった。

ミムラさん、むきたてゆで卵みたいにつるつるぴかぴかしてた!嫌悪感を抱かせないあの女子感!!「アキラ、子供になる~~o(^o^)o」をこんなに清々しい気持ちで観れるなんてと妙に感動してしまったw

そしてサム役の加藤諒くん。「大人だけど子供」を見事に演じてた。これメンタルごりっごりにやられてしまいそう…最後まで頑張って…!

 

みんな言っていますけど、中盤までは笑いながら観れるんですよ。でも平川がサムのことを面白おかしくアキラに語るところから内蔵がヒュッと冷たくなっていく。最初は弟のことをバカにされたことに怒っているのかなと思ったんだけど、2回目のときに「アキラは“業”を背負って生きているからだ」とストンと腑に落ちた。幼い頃に自分のせいで弟サムに障害を負わせてしまった“業”。アキラは30年以上その業を背負って生きてきたし、これからも背負わなければならない(サムと二人暮らしって言っていたから誰にも頼ることができない)。山際の言う「死ぬまで生きる」ことが求められる人生。「大人にならなきゃ。31歳だもん」という言葉には、サムを想う気持ちももちろんあるけれど、「大人になってもらわなきゃ自由になれない」「背負っているものを軽くしたい」という気持ちもあるんじゃないかな。必死に背負ってきた業を「おかしいでしょ?ww」って言われたら、しかもサムのことを話せる人と思った平川から言われたら、平川に対する怒りとともに自分への怒りが激しく沸いてきたのかなと感じた。平川は弟をバカにしちゃったから怒らせてしまった、くらいにしか感じてないだろうなぁ。"業"というものをこの時点で平川は知らない。

 

その後の平川の呪詛のような恐ろしい物語。もうさ、成河さんの語りって凄いじゃん?表現力やばいじゃん?その語りであんなに詳細に恐ろしい話をされたら、脳内でその光景がありありと再生される。その物語を聞かされているサムが「アアアアアアアアアアアアアアア」って叫んでいるんだけど、この「本能的な拒否感」が自分とリンクしてすごく苦しかった。トークショーでも成河さんが仰っていましたが、平川をどのくらい「天然」にするか悩んだと。ただ性善説で生きている"いわゆる天然ちゃん"であれば、こんな恐ろしい物語は作りださない。人を信じてきたからこそ、平川の世界が崩壊していく様がこちらも絶望的な気持ちになる。

 

最前で見るビル(サム)の行いは視覚的にキツかった。想像していた光景が目の前で行われるというのは止めを刺される感じ。公園で蒲田が則明の目を潰すとき、「プシュッ」という音とともに血液なのか組織液なのか液体が噴き出してたんですよ。初回のときはそんなの見えなかったから、衝撃が強すぎて「ヒッ」って声を出しそうになった。国尾の場面もゴキブリを手につかんで口に押し込めていたし、壁に押し付けたとき上から無数のゴキブリが落ちてきたのも……はぁ。極めつけはアキラの場面。額にカッターを刺して後頭部まで一気に切って溢れ出す血。もうね、ホラーですよね!!すいません!!目の前に起こったことが衝撃的すぎて書かずにはいられないんです!すいません!!そのあとにアキラの髪の毛(頭皮付)を平川に投げつけて、平川がうわって投げ返すんだけど、その髪の毛の塊がわたしの!目の前に!落ちてきたんですけど!!!髪の毛が役者の誰よりも近かった客の気持ちも考えてください!!!ダンダンッ ビルがサッと回収してくれたときはまじで感謝した。ありがとう、ビル。でもねーそのビルが持っているカッターの刃に血がこびりついててさー、ディティールの細かさにクラクラしたよー。

ダニーの話はとても美しい話だけれど、平川が「サムを死なせること」を意識して語っていることを考えるととても恐ろしい。「見届ける」と言っていたけど、平川はどこか直視するのを避けているように見えたんだよなぁ。まだ業を背負う覚悟ができていないというか。

最期の場面、PARCO版とは結末が異なるようですね。過去のはどんな結末だったのかを調べたら、公園で童話を読み聞かせをしている感じなのかな?あとアキラも殺されてない感じ?(DVDを買って見ればいいんだけど、家で見る勇気がない←) 今回は「許されない」結末。平川は童話を書くことを辞め、惨劇が起こった公園から去ろうとした。だけどそこに「魔王」からの電話。ビルと契りを交わした魔王の話の続きを作れと言う。自分の罪と死ぬまで向き合い続けるために童話を書き続けろということ。

山際もアキラも自分たちの業から逃げずに生き続けてきた。平川はその「業」の重さに、この先の未来でようやく気付くのかなと感じた。

 

観終わった後、ぐったりする。これを小劇場でやられたら、ほんっとに密度が濃すぎて逃げられない。劇場でDVDの予約もあったんだけど、家で見る勇気がありません…!(2回目) 則明の目が潰されるときの「プシュ」っていう音と光景が数日間頭から離れなくて、つらかった。

 

旅公演はまだまだ続いていますね。大千穐楽まで無事に駆け抜けられますように!

 

10/1の公演後に成河さんの1人会改めトークイベントに参加してきました。その時の内容はオケピの方がまとめてあげてくれてます↓ 

okepi.net

1時間くらいかな?成河さんって聡明でユニークな方だなぁと改めて好きになりました。落ちてたフリスク食べたときはびっくりしたよ…!!w