ただの備忘録

現場を振り返ることを枷にして記憶の定着を図る。つまりただの備忘録。(主に舞台の感想)

「木の上の軍隊」@紀伊国屋サザンシアター 2019/5/18ソワレ

洸平くんの「母と暮らせば」を見逃してしまった後悔と、過去の本作の評判が凄く高かったので行ってまいりました、こまつ座さん。

とてつもなく凄いものを観た。

以下、ネタバレです。

 


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原作:井上ひさし、作:蓬莱竜太、演出:栗山民也

出演:山西惇、松下洸平普天間かおり、有働皆美(ヴィオラ奏者)

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板の上にどーーーんと植わっているガジュマルの木。てっきりずっと木の上に居続けるのかと思っていたら、状況によって降りたり登ったり。食料調達しなければいけないんだから、そりゃそうだ。幹は布っぽい素材なのかな?あんまり硬くなさそうだった。友人から洸平くんが片腕を怪我してると聞いて心配したけど、言われなければわからなかった。登るときにあんまり片腕に力入れてないかな?とちらっと思ったくらい。凄いけど、役者の皆様は怪我と病気は無理しないでくれーーーーと思ってしまう。

 

洸平くんの新兵は愛らしくほがらかな島の青年。それが後半にかけて徐々に怒りや憎しみを上官にぶつけ始めるさまが怖かった。戦争という極限状態が彼をそうさせたのかな…?と思いながら観ていたけど、食料調達時にすでに戦争が終わったことを知り、それでもなにもしない国や上官に対しての怒りだった。2回観劇していたら、そのあたりの感情の機微がよりわかったかもしれないなぁ。

そして山西さん演じる上官。威張っているけどどこか憎めない。米兵たちが廃棄した食料を口にしてから、新兵の焦燥感をよそに現状に満足しはじめる。でも彼もまた国の命令によって島に送り込まれ、すでに戦争が終わっていると聞いても国を守ることを放棄した自分は国の恥と非難されると恐れて木から降りれないと反発する。彼もまたとても悲しい人だった。

戦争を題材にしているので終始重たい話なのかなと思ったけど、前半の新兵と上官のやり取りは面白くて笑ってしまった~。それぞれ残してきた女性(上官は妻、新兵は彼女)の話はくすくす笑ってしまった。普天間さんが回想でその女性たちを演じるのだけど、どちらも可愛くて愛しくて。まぁ上官と妻との関係性はあれなんですがw 二人とも同じように家族や大事な人がいて、でも決定的に違うのはその土地に生きている人間と外から来た人間かということ。二者のどうにもならない感覚の差。

「上官は悲しくないんだ」 

新兵の自分の住んでいる土地が侵食されていく悔しさや動こうとしない上官や国への怒りに涙が出た一方、上官の"外側"の感覚もわかってしまう。今現実に起きている沖縄の問題に対して、わたしは"外側"の人間だ。

 

最後、二人が木の上にいたままガジュマルの木がまっすぐに立ちあがる。木の上から地上に降りた二人だけど、彼らの魂はずっとガジュマルの木の上に留まって、今もその土地に生きているように強く感じられて圧倒された。

守られてるものに怯え、怯えながらすがり、すがりながら憎み、憎みながらも信じる

座席にめり込んでしまう感覚だった。"外側"のわたしにもガンッと殴られるように伝わってくる想い。ラストは暗闇の中、オスプレイの爆音が響く劇場。あぁ、これが沖縄の日常なのか。こんな爆音が日常になってしまっているのか。劇場が明るくなっても、高くそびえるガジュマルの姿と爆音の衝撃で涙が止まらなくなって立ち上がれなかった。心に鋲が刺さったような感覚とともに、ラストの演出は"体"にもしっかりと残った。

 

凄かった。凄いものを観た。

 

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