ただの備忘録

未来の自分に贈る、舞台の記憶と感想

「海辺のカフカ」@ACTシアター 2019/5/26、6/9

スリミの感想もまとめられていないまま6か月も空いてしまった…。今年に入って配属されたプロジェクトがまーーーー酷くて心身ともに余裕がなく、色々観劇していたのにもかかわらず一向にアウトプットすることができなかった(ここで愚痴るな)。その状況は現在進行形なんですがね、このままだと心身の疲労とともに記憶も薄れていきそうなので再開していく所存。

とりあえず直近の演目からということで、柿澤さんの今年のストプレ1本目の海辺のカフカ。仕事のあおりをがっつり受けてしまい、4回観劇予定が半分に…悲しい。

 

====================================================

原作:村上春樹、脚本:フランク・ギャラティ、演出:蜷川幸雄

出演:寺島しのぶ岡本健一、古畑新之、柿澤勇人木南晴夏、鳥山昌克、高橋努、木場勝巳

====================================================

 

youtu.be

 

今年の2月にパリのコリーヌ劇場にて公演。今回の東京公演は「ラストステージ」。

 

事前に予習をしておいた方がよいかなと思い、食わず嫌いをしていた村上春樹の原作を購入。最初は文章に頭が慣れなかったけど、中盤からは一気に読み進めることができた。まず思ったのは、これをどうやって舞台にするの??という疑問。

以下、ネタバレあり~~ 

f:id:ta__ma:20190715025955j:image

 

初見が最前で「い、いきなりですか…??」とビビりながら着席。アクリルボックスを使っての演出というのは事前情報で知っていたけど、思っていた以上のスピードで動かしていてびっくりした。めっちゃ速い転換。これは黒子の人たち大変や…。そしていきなり目の前に現れる黒子柿さんに心臓が止まるかと思った(下部の柿澤さんのつぶやき参照)。黒マスクをしていて目の辺りしか表に出ていなかったのに眼光が鋭くて鋭くて。カフカ少年が入ったアクリルボックスをカラスが押す姿にしょっぱなからウッときた。

しっとりとした初夏の湿度が満ちた板の上にゆらゆらと揺らめくアクリルボックスとシンプルな照明。

第一声がカラスの台詞で、その芯があって真っすぐに届いてくる声になんだか蜷川さんを感じた。いや、わたし蜷川さん演出拝見したことないのだけど、「あぁ蜷川舞台だ」と感じたんですよね。タイモンを思い出した。  

2012年の初演から続投しているのは古畑くん、柿澤さん、高橋さん、鳥山さん、木場さん。カフカ役の古畑くん、28歳。舞台だと成人男性が少年役をすることはままあると思うけど、古畑くんの骨格と体つきが少年の危うさを漂わせていて驚いた。特に腕の細さ…!体が出来上がる前のか細い腕で"15歳"の説得力が凄かった。ちょっと滑舌の甘さが気になったけど、それを含めて少年の不安定さと幼さが出ていた。

白のカフカと黒のカラス。カラスはカフカを見守っているというよりも少し高いところからカフカを見下ろして傍観しているような存在だった。佐伯さんとカフカが交わる直前の場面だったかな?アクリルボックを挟んで佐伯さんの手にそっと触れようとしている仕草をした柿カラスにドキッとしてしまった。

 

原作でも好きだった星野くんとナカタさんの組み合わせ。高橋さんは星野くんだったし、木場さんはナカタさんだった!!!凄い!!!木場さんのナカタさん、佇んでいるだけでナカタさんなんですよ。ナカタさんの役って、すぐに嘘っぽくなったりわざとらしくなったりしてしまう難しい役どころだと思うのだけど、ナカタさんにしか見えなくて座席に沈み込みそうになる感じだった。星野くんもまんま星野くんで嬉しくなってしまった。

でも、でも、2人のパートが少なくて悲しかった…。舞台化するといっても原作全てを満遍なくやることはないし、むしろ全部やろうとすると冗長化して「で、結局…?」となってしまうのは分かっているよ?でもこの高橋さんの星野くんと木場さんのナカタさんをもっと観てみたかったーーーという気持ちが強くて。

 

今回からの参加が寺島さん、木南ちゃんと健一くん。冒頭でアクリルボックスに入った少女の寺島さん、瞳がうるんで不安になりながら何かを探しているような表情を観て、凄いなと思った(こなみ)。健一くんの大島さんは中性的な雰囲気が自然でとても良かった~。そして木南ちゃん!本当に木南ちゃんは今後も舞台で観ていきたい女優さん。さくらも星野くんも「リアル」を生きている感じがとても安心できる(周りの役があまりにもSF的な存在というのもある)。

 

舞台版のカフカは"父親の呪い"がなく、下巻の中盤以降ががっさりカットされていて、「入口の石、閉じなくていいの!???」とか原作を読んだからこそ色々思うところが出てきてしまった。「カフカの成長」に焦点を当てているのかなぁ。それだったら森で過ごす日々とか日本兵に会う前後とか、もっと時間をかけてやってもよかったのでは?とも思ってしまう。

それでもアクリルボックスの揺らめきと美しさが漂う中、ジョニーウォーカーの猫の件では鮮血が飛び散り、ネオンの下世話な煌めきや星野くんのポン引きの件とかは妙に生々しくて、村上春樹の文章を感じた。 

 

一番最後、カフカが東京に帰るために大島さんのもとを立ち去るとき、カラスはカフカと反対方向に去っていくんですよね。カフカが行った方をちらっと見て去るカラスに心が掴まれてしまった。あぁやっぱりこれはカフカ少年が成長した物語だったんだ。と。原作にはない、舞台だからこその演出にグッときた。 

 

 

 

千穐楽のカーテンコール、出てきた瞬間からボロボロ泣いている柿澤さんを見て、思わずわたしもボロボロ泣いてしまった。あんな柿澤さん初めて見た。キャスト、スタッフが順々に蜷川さんの写真をもって一礼(古畑くんがもっともっと!と拍手を煽ってきたときはそんなキャラだったんかいとびっくりしたw)。涙を浮かべている方も多かったけど、一番柿澤さんが泣いていたね。子供みたいにボロボロ泣く柿澤さん、凄く愛おしく感じてしまった。

柿澤さんが蜷川さんと出会えたことに感謝。素敵な作品をありがとうございました!

 

 

木南ちゃん( ;ω;)( ;ω;)( ;ω;)

www.instagram.com

無事、全公演終了しました。
さようなら、カフカくん
その最後のセリフを
噛み締めて、放ちました。

カーテンコールの直前
袖に帰ってきたかっきーが
終わっちゃったね
って泣くもんだから
終わっちゃったんだな
って実感わいてきて
ぐしゃぐしゃの顔になりました
最後にスタッフさんが舞台上に出てきたら
オツカレサマ
ってパーカーの背中にテープで貼ってて
それ見たら
もっとぐしゃぐしゃになっちゃったよ

私は今回だけの参加だし
蜷川さんの演出は受けてないけど
みんなは7年も関わった作品で
大好きな蜷川さんの最後の演出で
その深い深い愛がだだ漏れてて
その波を受けちゃったの
だからもうぐしゃぐしゃのぐしゃぐしゃ

参加できてよかったです。
ありがとう、みなさま