ただの備忘録

未来の自分に贈る、舞台の記憶と感想

「上を下へのジレッタ」@シアターコクーン 2017/5/14ソワレ

「上を下へのジレッタ」と書こうと思っているのに、思わず「上を横へのジレッタ」と書きそうになる。お友達にお誘いいただいて観劇してきました!

横ちゃんも楽しみだったけど、ベンヴォーリオ担(@ロミジュリ2017)である私は馬場くんがどんな歌やお芝居を魅せてくれるかとっても楽しみにしていました。

面白かった~~~!

 

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ミュージカルではなく「妄想歌謡劇」。音楽によってジレッタが表現され、音楽によって話が展開される。下手したらいわゆる”ミュージカル”よりも歌っているのでは…?パンフレットには23曲分の歌詞が載っている親切設計(太っ腹!)。

※ちなみにジレッタというには漫画家である山辺の"妄想の世界"。人々はヘッドフォンをつけることで山辺が創り出す妄想の世界を体感することができる。

いやぁ~それにしてもアンサンブルさんたちの活躍が凄かった!皆さんがいるからこそジレッタの世界が見事に表現されていたと思う。"妄想歌謡劇"と銘打っているだけあって、曲がキャッチーで耳に残る。80年代アイドル・万博をテーマにしている曲は「まさに!」という感じ。冒頭でしょこたん演じるチエが空腹のあまり「I love you …たぬきそば」と歌ってしまうあたりとかクスッと笑えるところもあって楽しい。

 

横ちゃんは普段歌ってるイメージがないのだけど、頑張ってた~。この一年ミュージカルをたくさん観てきたこともあって「耳が幸せ…」という境地までいくかといったらそうではないんだけど(ごめんなさい)、門前は横ちゃんだからこそ演じられたんだなと。まずビジュアルがまんま手塚作品。チラシを見たときから思ってはいたけど、手塚治虫の絵のまんまの人間が存在するの?っていう。今回初めて生で横ちゃんを拝見したけど、何あの美しさ。肌の白さと黒い衣装がまた手塚作品濃度を上げてる。野心に溢れて、ジレッタを見つけた辺りからどんどん狂気をはらんでいく姿が似合う。プロデューサーたるもの横山さんには狂気を持った役を!と考えるのは性なの?(ドラマ「ザ・クイズショウ」(2009年)を思い出した。あれも白シャツに黒い衣装でしたよね?)

浜野さん演じる山辺もまた漫画の中から出てきたようなビジュアルで凄い。しょこたん演じるチエは絶食すると美人、食べた途端に肥満体型になってしまうという役どころをとってもアナログな方法だったけど、ちゃんと表現できてた。竹中さんはザ・竹中さんwww  

馬場くんはミュージカルスター役(笑)という、ある種の難しさがあったと思うんだけど、馬場くんの歌好きだなー。というかジミー役という前情報しかなかったから、初っぱなにピザ屋の配達の人で出てきたとき双眼鏡で二度見したwww 他にもパイロットや首相のお付きの人とかいろんな役やってたけど、どれも楽しそうに演じてて、ベンヴォーリオだからチャラい感じで楽しそうにやっているのかと思ったてたけど、どの役でも楽しそうにやっているのいいねいいね!

ジミーも「作られたスター」、チエと2人で歌う場面ではお互いが作られた者同士、心が通いあっているように見えて切なくなった。

 

野心溢れる門前だけど、ジレッタが政治に利用されるとなったらそれを食い止めようとするところは「ダークヒーロー」なのかな。でもそれは"正義"のためではなく、ジレッタは"エンターテイメント"として使われるべきであるという信念ゆえの行動というのが感じられた。それでも彼は誰もやったことのないエンターテイメントを実現させようと、"一線"を越えてしまった。「Ave DILLETA」~「上を下へのジレッタ」の流れが凄まじい。自らもジレッタに飲み込まれちゃうラスト、あの最後の門前の叫びは横山さんじゃないとできない。美しく狂気と絶望と懇願とがぐちゃぐちゃに混ざり合ったあの姿。そのあとの車のクラクションなどの地上の喧騒に対しての地下のシンとした静けさがたまらなく怖かった。

純粋に多くの人を驚かせたい、楽しませたいと新しいエンターテイメントを作ろうとした門前。でもそれが政治に利用される危険性、もっといえば戦争にも使われる危険性があるということを手塚治虫は漫画というエンターテイメントで伝えていたことに「凄い」という平凡な言葉でしか表すことしかできない。

 

あのジレッタの音楽をもう一度聞きたいと思って、ゲネの映像ないかと(公式のね)探したけどじゃにが絡むとなかなかないよねー。 

ってことで お写真多めの記事↓ (もちろん横ちゃんは写っていない)

natalie.mu